Four Leaf Studios 『かたわ少女』

 海外掲示板の有志が作ったエロゲ。日本語化もされてるしフリーでダウンロードできる。舞台設定は日本で、一応日本のエロゲのシステムを踏襲している。ヒロインは全員障碍者で、舞台もそんな身体障碍者でも通えるようになっている全寮制の学校。そこに、急に自分の心臓病が発覚してこの学校に通うことになった男が主人公の中井久夫である。不整脈って、昔俺も一回疑われて器械着けて1日生活したことあるんだけど、あれで引っかかってたら、こんなレベルで大変な病気扱いされかねなかったんだな。まあとにかく、シナリオは過度に障碍の部分に負うところなく、そういうハンディキャップを持った女の子が生きていたとしたら、そんな女の子が持っているかも知れない悩み、みたいなところに焦点を当ててシナリオを展開してて、設定との距離感がかなりちょうどいい。
 しかし、フィクションのイケメン主人公に付ける名前が中井久夫、みたいな「まあ、間違ってはいないけど……」程度の微妙なズレはあって、まあ学校の生徒会活動とかもなんかちょっとズレてるし、親友キャラの電波っぽさがなんか笑えない方向だし、あと日本人は初対面の人と握手はしねえな……とかいう程度の違和感はあるけど、まあ概ね、フィクションによく出てくる学園ものとしての描写はできてるかな。やっぱねえ、英語で書かれた文章を和訳してるから、なんか独白部分の文章、自分自身への問いかけとか入ってて翻訳ものっぽいとこはあるんだけど、それ以外の地の文、風景描写とかは海外文学っぽさがかなりいい方に利いてて、いちいち比喩がお洒落。以下各ルートの雑な感想。

  • 膝から下を切断しながら義足で短距離を走る笑美のルート。これが、一番エロゲの文法に則ってて、「あー、エロゲ、作りたかったんかなー」というのが伝わってくる。クライマックスの、好きな色の話を挟むあたりの間合いの入れ方はちょう格好良かった。けど、その数クリック後の抱きついてくる唐突さは笑う。
  • 顔面も含む大きな火傷を負って内気になってる華子。一番かわいかったな。付き合い始める前に、ジャズバーに入って2人でビリヤードする辺り、「なんか、障碍の設定とかよりずっと、俺との距離感を感じる……!」とか思って焦ったけど。エロシーンの入り方が、恋愛云々じゃなくて、内面の吐露からの延長が外部に出てきてる感じで、すげえ良かった。
  • 盲目なリリー。エンディングびっくりした。チャイナ服エロい。
  • 聾の静音。このキャラの頑なさはどうなんでしょうねえ……。正直ほんと好きになれなかったキャラですね……。リリーにかなり鬱陶しい喧嘩売るし……。シナリオ的にその部分が解決されるわけでもないしな。
  • 腕がなくて足で絵を描く琳。これは、掴み所のないことを言うヒロインのキャラの操る不思議な比喩が、翻訳挟んでることで更に距離感があってかなり小難しくなってて良い。ただねえ、これはほぼどのシナリオにも共通して、シナリオ上にヒロインと主人公の間に擦れ違いを起こさせてクライマックス前に溜めさせる、まあこれはそれこそ日本のエロゲにもあるわけですけど、そのディスコミュニケーションの拮抗点みたいなのが、日本人が作る物語より一歩だけ外向きのところに作られてるんですよね。なんつうのかな、ATフィールドの押し合いなんですけど、なんつうか、ATフィールドってもうちょっと自分の体に近いところに張るものじゃないの? ちょっと君ら、コミュニケーションがほんの少しだけ俺らよりアクティブなのが基本になってない? っていう違和感があるんですよ。どう説明していいのかよく分かんないけど。琳シナリオは特に、この掴み所のないヒロインが、どう自分の世界を保ちながら他人とも共有を図るかっていう、ほんとエロゲ向きの話をしてるんだけど、このねえ、ちょっとだけディスコミュニケーションの拮抗点を置く位置が、特に主人公の方が外側に置くのを人付き合いのデフォルトみたいに考えてて、それはなーって思った。まあ海外にいるコミュニケーションつらぽよ勢は、そう考えると大変だよな。