青年団 『この生は受け入れがたし』

 平田オリザが主宰する劇団の公演。数十年前に作られた戯曲だけれど、東北の震災で明確化された問題意識に基づいて再演とのことだそうな。寄生虫を研究する東北の大学の研究室を舞台にした、基本的には喜劇なんだけど、そこにちょっとずつその重たいテーマが顔を覗かせていく。氏の特徴である、演劇に自然な口調を持ち込む方法がかなりキレッキレで、場面転換もなく一つの時間軸、一つの場所に固定して、ありそうな情景をそのまま定点カメラみたいにして見せられる。その自然な口調の自然っぷりすごくて、特に西島っていう研究者の役の喋り方、ナイーブでちょっと幼くて高い声で早口気味な喋り方、「うわあ……うちの研究室にもいる……というか大体みんなあんな喋り方だ……」って思う。他の人も、ややはしゃぎ気味のテンションで適当な噂話するぽっちゃり気味の女とか「まあ、いるね……」って思う人ばっかり。
 あとは平田オリザ『演劇入門』をわりと最近読んだばっかりだったので印象が強かっただけかも知れないけど、その、舞台に誰が入ってきて、そこにいる人の関係性からどういう情報が交換されるのかっていう組み立てをする部分が、かなりロジカルに展開されてたような気がする。
 そうやって日常の情景を切り取って投げかけられる主題について、個人的にはあんまり、科学の研究を何かの比喩にして他人に説くのは好きじゃない(自分で勝手に納得して人生観にするのはいいんだけど)ので、どっちがどっちに寄生が云々っていう議論のところはあんまりいただけねーなと思ってたんだけど、最後のところで夫婦が、寄生虫の講義をしながら、その隙間にちょっとずつ意志を通わせていく情景はすげえいいなと思った。