key 『Angel Beats! -1st beat-』

 同名アニメを原作にしたビジュアルノベル。特徴はやたらと挿入される選択肢で、しかも意外と後ろの方までその分岐が尾を引くので、既読の完全制覇は無理だと言われているレベルのやつ。そんなわけで、アニメで一本道だったシナリオと大筋では同じイベントをこなす(キャラが実際に動く様子はアニメを思い出して各自で補完しよう)んだけど、ちょっとずつ自分好みの選択をとっていった場合のifが楽しめるってのが売りで、まあ日向や野田とものすごく仲良くなってたらどうなってたの、ゆりに絶対忠誠を誓っていたらどうなっていたの、なんていうのから、一番目立つのは岩沢が消えてなかったらってのと、松下五段が痩せたらってのを実装しています。まあアニメ原作のゲームなんだから、当たり前にアニメ視聴は前提だよね。実質エンディングまであるルートは3本+予告編かな。まあ実際は、そんだけ選択肢を増やして分岐を作って、でトロフィー形式で200個かな、色んな分岐の組み合わせを試してみようね、なんて方式でボリュームを稼がれてもなあ、keyがもたらす重厚な物語って、そんな? とは思うよね。『CLANNAD』以降の流れではあるけど、しかし。本筋以外の、選択肢で逸れるギャグパートのクォリティはなかなかのものだったりするんだけど。
 ユイルートはアニメのそのまんまで、そこにアニメで唐突すぎるって言われた分の補完が入るんだけど、まあ足されたところで物語の質が変わるわけではないしな、という気持ちと、まあでも今回のゲームで、メインのイベント以外の日常で、色んな選択肢の影で他のキャラが色々動いてそうなところを想像できるぶん、そういう補完が影にあったんだなっていうのがわりと素直に入ってくるというのもある。このルートはギャグ用の選択肢の質がわりと微妙。松下五段ルートも大筋はkeyっぽい、っつうかそれこそ『ONE』の久弥とかまで辿れそうなんだけど、リトバスに通じる味を1つ入れてきたりもしていて、さすがに洗練された形で語る話になってる。岩沢ルートで語られる生前の話はまあアニメ通りで、そこに恋愛要素が入る。その終盤が『AB!』として見れば正しいんだけど1本のシナリオとして見たときにあんまり後味よくない展開が続いて、まあ岩沢が残るっていうif分岐がわりと早くて本篇との絡みの必然性がそんな強くないだけに、もうちょっと丁寧にやって欲しかった感はある。残らせてシナリオに入らないルートもあって、それはわりと本筋準拠なだけにな−。まあこのルート、岩沢のミュージシャンらしい一言二言は良かったし、シリアスな場面に入るどうしようもないギャグ選択肢とかも嫌いではなかっただけにな。