-150219

 後輩の1人が、わりと俺がやってたことに近い話に興味があるらしくて、なんなら俺らの論文を基にしたレビューを最近読んで勉強をしているらしい。そりゃいいね、なんつってさ。
「で、cmizunaさんがさんざ愚痴ってた、物理じゃなくて算数な話って、なんだったんですか?」
 そうそう、俺が去年の5月ぐらいにちょっと手を付けて結局やってないままな話が1個あって、まあ諸々の事情から「物理じゃなくて算数な話」という名前で後輩中にお馴染みなのだ。
「えっとねえ、使う群をこうするんだよ……。でもこれはどうやら物理ではなくて算数らしいんだ……。ちなみに、一旦双対性でこっちに飛ばして、そうしたらアレがアレできるようになるから、アレしてからもっかいこっち戻すねん……」
「物理的な動機はなんかあるんですか?」
「これを有名なとある例に適用して、まあ答えが分かってる例だから、そしたら取り扱い方がわかんないやつの取り扱い方にconjectureが出せるかもなんですよ……」
「……それ、"物理じゃなくて算数"ってことになった時、そこまで説明しました?」
「ぜんぜん?」
「わはは」
「わはは」
 若さ溢れる後輩に一縷の望みを託したいところである。まあ、俺と同じことやってても、4年後に大変なこと(無職)になるので、ほどほどにしないといけないんだけど。似たようなことやってる他大の後輩とかも最近うちの研究所に居て、まあだらだら色々思い出しながら"よく分かんないけど話を聞いての第一感"みたいの放言が出来て、それは無責任に楽しい。



 うちの大学の図書館、視聴覚室みたいのあって。貸し出しは出来ないんだけどDVDがわりと色んなのあって、その場の個人ブースつうかパーティションのある机みたいの、狭い部屋に10個くらい用意されてるんだけど、そこで観るようになってんのね。ここ2年くらいたまに行くんだけど、こないだもそこの図書館に久々に用事があったから、そこで映画を1本観てきたんですよ。もう、なんて映画を観るかも決めて、それが図書館にあることも蔵書検索サイトで確認してからのやつね。160分のわりと長めなことも知ってて、なんならどうせ図書館に行くとウンコがしたくなるから、あらかじめウンコを済ませてから図書館に行く感じのね。
 実際観たのは、巨匠スタンリー・キューブリック監督の遺作、『EYES WIDE SHUT』。夫婦の性愛と、そこに抑圧される夢想と現実の狭間を漂うような気味悪い話、なんだけど、これがねえ。始まって2分から最後までおっぱいが出っ放しの映画で。ニコール・キッドマンのおっぱい! そんな映画、まあ一応パーティションで区切られてはいるものの、なんで俺はこれを衆人環境で観てんだってなったよね。しかもこの視聴覚室の問題として、隣の机の人とリモコンが干渉するんですよ。基本的な操作はプレイヤーに直で付いてるボタンで出来るからリモコン要らなくて、わりと最近まで、リモコンは一旦窓口に借りに行かなくちゃ駄目だったんだけど、たぶん最近からデフォルトでもう各机にリモコンが置かれるようになったらしいのね。普通に観てたらもう、2,3回くらい、いきなりおっぱいが巻戻しされるわけ。なんなの、とか呟きながら俺は早送りでおっぱいを元の位置に戻すわな。ぼろんぼろん!(おっぱいのこぼれる擬音) そんでもう数回目かな、隣に座ってるやつがまたリモコン弄ったと思ったら、急に画面にチャプター名とか音量とか色んな余計な情報が出てきて、またなんかしたらしいけど、これはどうやったら戻るんじゃい……って溜息をつきながらリモコンを睨んでみたら、また画面が元に戻って、お、と思ったら、なんなら隣の人が覗き込んで、リモコンこっちに向けて戻してくれたらしいのね。目が合うと一つ頷いて自分のブースに戻っていく隣人。「そういうのあるんだ……」なんてさ。そのちょうど覗き込んできたタイミングではおっぱいが出てなかったけど(この映画にしては珍しい)、もうそっから先は気が気でなかったよね。160分ずっと「これは芸術……これは芸術……」って呟き続けてたね。