2人で両手を繋いだら、次にぼく達の国の通貨単位を決めよう。くるくるろんど。稼いだ鼓動を利子にして、君に返したいんだ。くるくるわるつ。

 いい加減踏ん切りを付けないといけない。45万円ですよ。予備校の値段。これをどこかのタイミングで、払う覚悟を決めなくてはいけない。10月の最後の最後に受験を決めたあの時に「まだ間に合う8ヶ月コース、10月中に入学を決めるとn万円引き!」っていうのを見ては「そういう、急かして何かを決めさせるやり方には乗らないことにしているのだ」と思ってその時は見逃し、11月の最後に独学の限界を感じて調べた時には「なんだ、もう冬開始のやつは始まっちゃってるのか、こりゃ春開始コースだな」なんて見逃した、それもこれも全部、未だに自分がこれ受験するの決めて数十万円払って、取り返しのつかない決断をするのが嫌だからですよ。出来るだけ決断は先延ばしに先延ばしを重ねて、あらゆる事態の変化に備えたいんです。いやいやほんと、認知はする、認知はするから! 俺に何かを決めさせるのは、ほんと勘弁して欲しい。何も決められない、どう決まった先の世界でも生きていけるとは思うんだけど、それはあらゆる選択がどっちでもいいように見えることと同じではないのか。決まってからでは遅すぎるんだよ、なんて諭されたので対処方法をとり続けた結果、決まるまでは早すぎて何もできない。
 まあこんな先延ばし大好きなのは前からそうで、ここ数年に至ってはその自分の性格も全部踏まえた上で、もう何ヶ月か1回に物凄い躁モードに入る夜があって、その時に出張とか発表とかに関して取り返しのつかないとこまで決断と手続きをしてしまう、次の日に元のテンションに戻って以降は嫌な顔をしながら粛々とその決断した予定をこなしていく、みたいなサイクルでなんとかやってきてたんですけど。しかしこの受験に関しては、なかなかその躁スイッチが入らない。こめかみを押しても眼球を押しても頸動脈を押さえてもスイッチは入らない。前立腺を刺激するとちょっとむらむらくるけど、それは関係がない。というか、物理やめて一番きついのがこの予備校の授業料見てる時で「なんで俺はこんなとこに数十万払おうとしているのだ、なんなら俺のもう丸4年会話してない同僚の同級生はインターネット上の情報によると研究職が決まったらしいというのに、」ってテンションがた落ちしちゃうので、これに関していつもの躁スイッチでなんとかしちゃおうというのが無理。こうなったらもう理屈の方で自分が納得して、ここで決断しないといけないっていうのを理由づけないと駄目だなあ、なんつってさ。っつうか、もうちょっと本当のことを言うと、数十万円っていうお金の価値がよく分かってないんですよね。なんかいっつも、金に糸目を付けないとかいうと笑える年収(主に笑うのは知り合いの女子)だけど、エロゲとか同人とか漫画とか、買うってことになったら値段見てないから、価値基準を測るための価格っていうのがよく分かんないんだけど、でも多分、数十万円っていう金は大した金だろ。知り合いの女子に渡して「俺もう京都からいなくなるから、1回だけ、1回だけやらせて下さい!」って土下座したら、もしかしたらいけるかもしれない程度の額ではあるだろう。それは数十万円とプライドと、もう1個たいせつなものを捨てているよ……? そしたら、春開始の授業の無料体験みたいのが1月の中頃に予備校であって、その場で申し込むと2万円が割り引かれるのだそうだよ。さすがにこの春のやつには、どうせいつかどっかのタイミングで申し込まなくちゃいけないものだし、どうせいつかなんか他の理由で「しょうがない」って思う羽目になるものだから、それまでの俺の気持ちが2万円なら売れるか。売れる。そうかあ、なんつって、今日の夜かな、その予備校まで行ってきました。取り敢えず担当の講師の顔と声を確認して、まあ受け付けないレベルでなければ申し込もう(cmizunaさんは普段、声優が声を宛てているような人の声しか聴いたことがないので、実に声に厳しい)くらいの、かなり前のめりも前のめり、ジバニャンもかくやというくらいの前のめりですよ(せっかく流行りに後れないように『妖怪ウォッチ』をやったので、やった人にしか分からないギャグをちょくちょく挟んでいくことにしました。もうやってる人にはどっかんどっかんウケている超面白いギャグです。)。
 定刻19:30、会場には俺を含めて3人。仕事帰りのスーツが2人と、あとジーンズにニットカーデという超ゆるゆるなやつが1人。最後のやつのカバンの中には3DS入ってるし、それ全部含めて、無職の制服みたいなもんだからな。そこにその、担当講師がやってこない。なんか交通事情かなんかで、その担当講師は今日は来れなくなったそうなんだよ。マジかーなんつって。それでも一応、その予備校のスタッフみたいのはいるから、その方にまあ授業以外の部分、スケジュールとか銭の話とかは訊けたんだけど。引っ越した時に転校って出来るの? なんつってさ。まあ兎にも角にも、数十万円を出す気でいたのに、とんだ肩すかしですよ。んで、予備校を出てそのまま、近くのヨドバシカメラに行きました。自転車を買いにですよ。なんかねえ、もう俺の自転車、今殆ど乗ってないんだ。まあ数年前からイヤホン付けて自転車乗ったら駄目になったせいもあるけど、まあ一番の理由は、もう俺の自転車ってば2年近くパンクしたままだし、ベルは壊れているけどチェーンから異音がし続けているのでみんな気付いてくれる、という、なんか自転車の形した鉄屑を上手く転がしながら乗ってるみたいな感じになってるから。しかもうちの自転車、パンクを何度直しても、気が付くと後輪の空気が抜けることになる。もう俺のアパートの隣人が、駐輪場の俺の自転車の後輪の空気が抜ける勢いを応用した奇怪な自慰行為でも編み出したんじゃないかっていうくらいの頻度でパンクする。そんでもうしばらく乗ってないんだけど、今度その予備校に通うことになったら自転車がないとつらいし、あとなんか最近、タイヤが空気じゃなくて中までウレタンかなんか詰まっててパンクしないようになってる自転車とかあるんでしょう、そりゃいいやなんつって、あとはアパートの隣人には隆々と黒光りのする双頭ディルドーを贈ればそれで万事解決なのでしょう。え、隣人は女性なの。まあそれで自転車を買えばいいんじゃないかと思ってて。そんでもう、最近の自転車買いに行くのに、なんか一番面倒がなさそうなのがヨドバシかなーってなってる自分がよく分かんないけど、そんで気に入ったのがあればそのまま乗って帰ればいいし。くらいのつもりで行ったら、なんかヨドバシの自転車売場、2階にあるのね。そのまま乗って帰るの想像してたから、そっからスイスイ自転車を漕いでエスカレーターを下るのを想像しちゃって、かなり面白いなとは思ってるんだけど。
 まあそんなだから、自転車もたいして選ぶ基準はないわけ。パンクしないタイヤのやつで、カバン入れる用のカゴは付いてて、あと6段ギアが付いてればそれでよくて、その中で一番安いの、って探すと、まあこういうのが大体売れ筋らしくて、この条件を満たして他はたいして何も変わらないような自転車のシリーズがいっぱい並んでて、大体どれも26,000円から35,000円くらいの間に入るくらいなんだ。まあどれもこれもこの値段なんだから、この機能の付いてる自転車は今これが適正価格で、得も損もなく、この機能にこの金を出せるか出せないかっていう話なんだけど、もう分っかんないんだよね……。26,000円って、いくらだ? なんなら今のパンクしたままの自転車も乗れないことはないわけで、じゃあその数万の金は何に対して払われるんだ? あのねえ、こんなとこで首をひねっている俺が、さっきは危うく数十万円という金を動かそうとしていたというのが笑えるよ。
 結局諦めて、ヨドバシ歩いてたら次、イヤホンコーナーがあって。そういや俺のイヤホン、左耳が断線しかけてるんだったっつって。いや、なんか、断線って言うと全く聞こえなさそうな感じするでしょう、実際俺がこれまで使ってきたようなイヤホンもそうやって、ある日突然片方だけ聞こえなくなる、断線しましたね、ってなって買い換えてきたわけ、なんか今回は単純に、だんだん左耳から音が出なくなってきているけど、出てはいるんだ。なんか気が付くと、音の立像が2cmくらい右にズレてる、それに慣れてしばらくした頃にまた右にズレる、みたいな感じで。これがまた微妙で、明らかに右に寄ってるけど、数年前に病気してから右耳に聞こえない音域あったりするせいで俺にだけ丁度いい、みたいのをしばらく維持してたのが、先月更にズレて、これはもうどうしようもなくおかしい、けど一応左耳も断線してるわけではない、みたいな状態で。んで今使ってるイヤホンのXBA-10、これがわりと中高音の伸びが気持ちよくて、特に女声アニソンしか聴いてない俺としてはこれをもう1回買い直すか、あと同じ価格帯で評判がいいK374っていうのも気になる、と思っていたら試聴コーナーにそのK374があって、ウェットティッシュでふきふきしてから試してみるわけ。なるほど、『美しく生きたい』の低音の圧力がこう聞こえるか。新しい聞こえ方するのも悪くないなあ、なんつって。あと、ちゃんと真ん中に聞こえてる。んでその売場に今使ってる方、XBA-10が置いてなくて、もうここで買うならK374一択なんだけど、さてその5,000円ってなんだ? 別に今のイヤホンでもたいして問題ないし、あと新しい聞こえ方って言うけど、家のPCで使ってる方のヘッドホンがわりといいやつで、いや良い悪いっていうより、なんかプロのレコーディングとか用に全くクセのないように作られてて、実際そういう現場で使われてるヘッドホンなわけで、まあだから、これで聞こえないものは新しい聞こえ方も何もないだろうという気がするので、なんかあんまりイヤホンの聞こえ方云々っていうのにあんまり意味があるのかどうかも、だいぶよく分かんなくなってきている。5,000円は何に対して払われるんだ? なんつうかねえ、もう数十万円どころか自転車の数万円どころか、イヤホンの数千円の価値すらも決められない。わけ分かんないまま帰りにスーパーでリンゴを8個買った。