PULLTOP 『神聖にして侵すべからず』

 どこぞの住宅地に城を構えて、そこを領地とするファルケンスレーベン王国、その第63代女王として君臨するヒロイン瑠波と、それに仕える主人公隼人やそのクラスメイトたちの物語。ほぼ自称するだけで実権のない王国が、地域の住民たちに慕われてて成立している、なんてちょっと前のPULLTOPのクローズドな優しい世界みたいなおはなしだが、ところがどっこい、瑠波以外のルートはむしろ、その黄昏の王国から飛び出すための物語だったりして、まあ与えられてる試練は甘いと言えば甘いけど、内部で満足するような話ではなく、必然的に隼人と引き離される瑠波の物語にもなっている。共通ルート前半のコミカルなノリはエロゲエロゲしていてややつらいけど、個別に入ってからは、えらく話のテンポもいいし、なかなか。希シナリオはちょっと飛びがあるというか、お嬢様は観察者から踏み出されましたうんぬんの話をされても、その設定は面白そうだし確かにそういう面もあるだろうが、それちゃんと描写されてんのは見たことないなと思う。
 そして黄昏の王国の虚構性に挑みかかるメインの瑠波ルートは、なんだろうな、虚構だと知りながらも、それに対して自分が持っている、自分が継いでいる、王としての誇り、そしてそれに価値を見出してくれている周りの人たち、そんなもの最初の共通ルートから描かれていたはずなのに、それを上手く目に見える別の形にして(会長の話をメタファーにして)意味を信じ込ませてくれた物語の構成は珠玉。瑠波のキャラクター造形を始め、絵はかなりいつでも可愛いし(操の私服は、そういうキャラにしてももう1バリエーション欲しいが)、相まってエロシーンもかなり良い。共通ルート辺りから想像してたのよりずっと良いエロゲであった。

神聖にして侵すべからず

神聖にして侵すべからず