『好き好き大好き!』

 内気で思い込みの激しいラバーフェチの青年が、見初めた少女をさらって所有する向上の地下室に閉じ込めて、ラバースーツを着せて監禁するというビジュアルノベル。なんか粗筋の時点で普通のエロゲのバッドエンドから始まるかのようなストーリーだが、ある意味それはそうで、幼い頃の原体験のせいでゴムが好きで好きでしょうがなくなっている、ずっと見つめてきた少女がある日酷い目に遭っているのを目撃して絶望する、なんて経緯の果ての果て、ぐるぐると思い詰めた先に辿り着いた物語なのである。ここから始まるゲームとして一応選択肢が出るものの、基本バッドエンドしかないのもやむかたなしである。一応バッドエンドの中にもある程度マシなものもあって、しかもそれはどちらかというと、その監禁という犯罪行為の後ろめたさや、ラバーフェチという異常性を大好きなヒロインに知られたくないという恐ろしさに打ち克ち、コミュニケーションをとろうという方向の選択肢を選んでいくと、殺されるようなバッドエンドじゃなくて逮捕されるようなバッドエンドに進むことが出来るのだ。その正しさという方向性がつらい。しかもそれが、コミュニケーションでヒロインと少しずつ心を通わせているように見えるけど、実際はそれってストックホルム症候群とかいって、単に生存本能で被監禁者が監禁者に共感する自己欺瞞である、みたいな説明をされてしまうと、もうなんでもなくなってつらい。