『たまこラブストーリー』

 『たまこまーけっと』の劇場版。たまこまーけっと、何がつらかったかって、商店街っていう場の安定感を優先して(制作陣の言葉を借りると「変わらないものの良さ」とかいう)、あまりに簡単に個人の思いが潰れてしまう、まあ具体的にはもち蔵の告白の不成立がギャグ扱いされパターン化され(観てる側の安心感にされ)て処理されるとこと、あとはたまこの変態餅娘っぷりに鈍感さみたいのを押しつけて(そういう"キャラ"として話をパターン化する)、変わらないいい子としてあんまりその内部が見えてこないとこにあって、まあそれが俺は作劇上の怠慢に見えていたわけですね。まあこの辺、男女を逆にすれば安いハーレムアニメのよくある設定なので、感情移入すべき主人公を俺が間違えて観てたといえばそうなんでしょうけど。
 まあ今回はそこを思いっきり突き崩すようなタイトルで、トリックスターのモチマッヅィ組は南の島に追いやって、もち蔵の思い切った告白、それに対してさんざ悩んだ末の答え(そしてパンフレットの最終ページの1枚絵へ)ということで、視座をもち蔵が奪取して、"変化"に対する反応をたまこに迫る。あのねえ、告白をなかったことにしてくれって頼むのなんか、反応に対する時間切れを追求する以外の意味なんかないですからね。そしてそのたまこの反応がかわいい。やっと女の子としてのたまこの描像が立ち上がってきた(上に書いた意味で)。両親の馴れ初めや商店街のみんな、バトン部や史織などの親友たちと、持ってる小道具やエピソードを活かしきって、しかもそれらに簡単にドラマツルギーを委託せず、ちゃんとラブストーリーはラブストーリーに、もち蔵には糸電話で解決する。良かった。結構期待値高めで観に行ったわりに、その1.2倍くらい良かった。もち蔵は駅のバス停から新幹線行くときは右上から行くんだね。俺は地下鉄の前を通る派だよ。