銀時計 『おたく☆まっしぐら』

 田中ロミオがシナリオのゲームだけどSLG部分のバグが酷くてゲームとして遊べない、とされている一作。ですよね。まあ確かにバグは酷い。シナリオも未完成で、途中のシナリオ、しかもエンディングに向けて一番いいところが完全に抜けてるキャラもいる。なんでこんなことになっているかというと、アキバを舞台にしたマップ選択移動と能力数値型のSLG形式をとっているぶんだけフラグ管理が難しくなったとか、まあ色々言われている。なんなら有志のパッチで、そこのSLG部分を完全に無視してロミオのシナリオだけを純粋に楽しめるようにしようとしてる人たちもいるらしい。分かる。すごい分かる。ロミオのシナリオ、出来てる部分はちょう面白い。無駄に熱くて濃いオタクたちの熱さをパロディとしてお祭りにする、それもオタクの中側の人から見た正しくて詳しい知識に基づく、愛(かね)ある故の皮肉めいたパロディが面白い。各ヒロインのルートに入れば、オタク故のあるあるで濃くて哀しい悩みとぶつかる。2次オタに恋してしまった幼馴染み、周りに担ぎ上げられた女ゲーマー、ネットに画像を晒されるレイヤー(これに関してはこのゲームが2006年発売、現実はそっから8年分遠くに来てしまったよ)、どれも普通に扱えば下らない話なんだけど、ここまで「分かってる」ロミオにテーマとして取り上げられてしまうと、これがちゃんと面白くて切なくて、そして最後は爽快感のあるシナリオになってるんだからさすがだ。ついでに言えば、いつものロミオっぽくもう一段階大きな構造もある。こりゃロミオのシナリオを邪魔するSLG部分は余計だ、と思う気持ちは分かるがなあ。しかし俺がロミオをロミオっぽいなあと思うのはそのSLG部分、何を数値としてどういうパラメータにするか(オタクの知識が増える→オタクとして濃くなる→喧嘩も負けなくなるとかいう理屈を張る)というところに、がっと俯瞰する、距離をとって一気に上から見下ろす田中ロミオ、それは『Rewrite』のMoon篇だったり、『C†C』で自分の係数を隠す太一だったりすんだけど、そこにロミオらしさを見る俺としては、そこのSLG部分が要らないものだとは思えないがなあ、というところ。まあ未完成バグだらけなのは実に惜しいけど、まあ出来てる部分を遊ぶならそれはそれだけでも全然面白いので。

おたく☆まっしぐら初回版

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