ジョセフ・メン 『サイバー・クライム』

 ちょっと昔、クラッカーのやり方が「トロイを忍ばせてbotとして操り、企業サイトへのDOSアタックに使って脅迫する」だった頃(今は個人情報をそのまま盗んじゃうよね)の、インターネット犯罪のドキュメンタリ。洋書のそういうドキュメンタリらしく、個人に迫ったエピソードを編み上げて、1つのトピックの記録にしている。セキュリティ会社のエンジニアの視点から、そしてその犯罪の温床であるロシアに赴くサイバー警察の視点からの2部仕立て。まあ基本はそいつらが活躍してめでたしめでたしな筋なんだけど、よく見るとそれで解決した事件は一部に過ぎず、そしていまご存知の通り、ネット犯罪はもっと悪質に、ありふれたものになっているんだね。なんというか、空き巣対策の本を読んだときにも思ったけど、こういうのに感じるのはもう無力感だけで、わざわざ狙われないように目立たないように生きていくしかないんだな、という諦めはある。あと、インターネットってもともとここまで広がることを想定してない設計(軍事とかCERNとか)なので、ちゃんと全部作り直すべきだ、みたいなことを結構多くの人が言っていて、それは「はー」って思う。

サイバー・クライム

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