林公一 『擬態うつ病/新型うつ病―実例からみる対応法』『それは、うつ病ではありません!』

 Webで有名な林先生の、まあ独自の言葉で言うところの「擬態うつ病」についての2冊。特に理由なく罹り薬を飲み続ければ半年から一年で多くが治る「うつ病」に対して、それと似たようなうつ状態を示すけど別の病気だったりパーソナリティ障害だったり、あとはただの詐病だったり、とにかく自称他称鬱病だけどほんとはそうでないものを擬態鬱病として、明確に区切ることを目的としている。まあとにかく、webで募集して送られてくる症例に対して、それは鬱病/擬態鬱病というのをざくざく区別していくのだから、まあわりと分かりやすい症例ばっかりなんだけど、こういう本を読む人が一番困るのって、いわゆる非定型鬱と単なる甘えとの違いなんじゃないかなー、それを短い文章から読み取るのは難しかろうよー、と思いながら読んでたら、えー、この著者、たぶん非定型鬱は鬱病として存在しないことにしてるっぽいのかな。DSMでいう「うつ病症状がほとんど一日じゅう、ほとんど毎日、かつ2週間以上続いている」というのに反していることを基準にして、その辺をばっさりしている。一応は適応障害の側から、ストレス要因と本人の性格の問題のバランスとかいう話もしているけれど、根本的なところで甘えを鬱病と自称してる人に対してとても厳しい。後者なんかは、書題通りそこの快刀乱麻っぷりがメインのところで、そりゃ身近に擬態鬱病っぽい人がいてそれに腹立ってこの本を読む人なんかには、「それは鬱病じゃねえ」って断言してもらえるのが心地良いんだろうけど、それも品の無い話だよなあ。「薬を飲めば治る"鬱病"とは違う」という意味ではまあ治療の方針が全然違ってくるから、そこの区別はそうあるべきなんだけど。鬱という言葉が定着しすぎたのかねえ。

擬態うつ病/新型うつ病―実例からみる対応法

擬態うつ病/新型うつ病―実例からみる対応法

それは、うつ病ではありません!  (宝島社新書)

それは、うつ病ではありません! (宝島社新書)