上野正彦 『死なないための智恵』

 監察医として長いこと死体の解剖をやっていた著者が語る、日常であり得る死のパターンと、それに対する防御策の教え。刃物を持った人に襲われそうになったら兎にも角にも動脈を守れとか、胸の圧迫で窒息するとか、具体策を教えてくれるんだけど。それが実際にあった事件を例に出しながらなので、読んでてリアルで痛々しいし、その分だけ覚える。時折出てくる教育に対する提言とか、最近は少年による無差別な凶悪殺人が増えてどうのこうの(その"最近"ってのが、著者が退職してからのこの20年分丸ごと積分した印象論だったりして、なんかそれが「年をとるってこういうことかよ」っていう一周回った哀れみすらある)みたいな、ちょっと専門を外れた話になると的外れな話になるのは読みづらいけど、まあこれで自分の命が助かるならそれに越したことはないやな。

死なないための智恵

死なないための智恵