受動的に美しく、能動的には可愛いあなたへ。

 エンペラーペンギンが好きでしてね。いや、好きとかいうのも烏滸がましいけど。あいつら、ただ生きてるだけだからな。俺はもう壊れてる。そうねえ、好きっつうか、まあ、好き、面白い、興味深い、うーん、興味深いかな(花占いか)。cmizunaさんはエンペラーペンギンに興味を抱いているのです。
 まあきっかけは『March of the Penguins』って映画(観た時の感想)で、まあその後、なんなら書いた同人小説にはエンペラーペンギンが出てきたり出てこなかったりする(まあ出てこないんだけど)(は?)(でも、出てきたり出てこなかったりはする)(は?)くらいのお気に入りだったんですけど。でも実際、俺、本物のエンペラーペンギンって見たことなくて。見たことないのに、いくつか参考資料とか写真とか見て、想像だけで小説に書いちゃったんだよね。「お前は、日本にはいない虎を中国からの伝聞だけを基に二条城に描いちゃった狩野なんとかか」そんないいもんじゃないよ。「お前は、夜中に悶々として、見たことない女性器をノートに想像だけで描いて、それを自分で見て何故か昂奮しちゃう中学生か」それじゃ比喩じゃなくて昨日の日記でしょ。ちなみにその絵はダッチワイフの股間に貼った。
 いやまあ、それというのも、日本でエンペラーペンギンを観れるのって、名古屋港水族館と、あと和歌山にあるアドベンチャーワールドってとこだけなんです。だからまあ、この2つ、特に関西にあるアドベンチャーワールド、きっかけがあったら行ってみたいなあとは思ってたんですよ。いや、アドベンチャーワールド、ほんとに有名なのはパンダの飼育らしいんですけど。俺は、ペンギンが、見たかったの。
 そんな「きっかけがあったら行ってみたいなあ」なんてぼんやり口を開けながら生きてても、きっかけなんかないわけ。実際2年くらい無かった。同じ「きっかけがあったら行ってみたいなあ」ランキングに入ってるダイアログインザダークなんかそれ以上なので、なんかきっかけを作ってくれる美少女を募集しています。
 ところがですよ、大学から毎年4月に貰える学生便覧って書類があって。まあぺらぺらめくって「何か見抜き出来るものはないか」って思いながら学歌の五線譜を眺めたり、「今年から理学部専門のカウンセラーが配置されたらしいぞ」(聞くところによると大学全体のカウンセラーより繁盛してるらしい)なんて思ったりしてたのね。あの、この辺りの脇道に逸れるやつ、どうでも良くない? 俺、さっさと南紀白浜に行った話、したいんだけど? じゃあ、あったことだけ話すね。えー、そしたら学生便覧の中に、うちの大学が持ってる保養施設一覧みたいなページがあって、そん中に、アドベンチャーワールドのある南紀白浜ってとこ、まあ元々海水浴とかでも有名な関西の保養地なんだけど、そこに合宿所みたいなのを持っているらしいのね。一泊1,100円だとさ。そんなの、あるの知ったら俄然行ってみたくなりますよね。いつか行くなら、大学にいるうちにここ使って行ってみたいと。
んで、ついったに突然「あ、そうだ、来月とかの土日で、ほんとに大学の保養施設使って南紀白浜行きたいので、プライベートに物理の話を持ち込まない良識ある人で、なんとなく予定があいそうな人がいればあれであれであれしてください。」って投げたのが、先月の中頃くらいですかねえ。そしたら、まあ前からちょっと面識のあった同級生からほんとに連絡来て、んでとんとん拍子に、5/12から13の週末を使って行くことが決まりました。
 なんならその人、その保養施設に何回か行ったことがあるらしくて、向こうにあるスーパーの食糧事情とか、バス停から歩いてどのくらいかとか、その保養施設の管理人がどんな人かとか、大体既に何でも知ってるわけ。俺の方は、まあ一応交通手段のバスとかアドベンチャーワールドの入場券の手配とかしたけど、それ以外のことは、その保養施設への連絡から何から、何でもその人がやってくれるのね。気が付いたら、あんま現実感のないまま、出発日になってた。まあ何故現実感が無いかというと、次の週に研究室内で小さい発表をすることが決まったり、完全に研究に対する心が折れて「3年後に物理をやめよう」って決めたりしたからですけど。



 一応、その来週の発表に使う原稿とか持っていったんですけど、それを出す暇もなく、南紀白浜までの4時間強ですかね、だだらにその同行者とプリキュアの話とかして。でまあ向こうに着いて、保養施設の管理人のおばちゃんが妙に機嫌のいい日に当たったらしくて、その保養施設から自家用車に乗せてもらって南紀白浜の辺りを一通り案内して貰ったりして、最終的にアドベンチャーワールドまで送ってもらいましたとさ。あとおばちゃんには、自家製カラスミをもらった。和歌山に於ける、チュートリアル後に王様から貰える薬草みたいなもんだと思う。あのおばちゃん、王様か……。


 あのよー、エンペラーペンギンがよー(和歌山弁)(ソースはおばちゃんしかない)、意外と入口付近ですぐ見れるのね。しかも、そんなに混んでなくて目の前の水槽で見れるわけ。すごいいっぱいいる。まあ、いるな、と思って。そりゃ、飼育してるよって宣伝してるのにいなかったらびっくりするし、エンペラーペンギンの背中にチャックが付いててもびっくりするし、一羽の顔が明らかに俺の祖母に似てるとかだったらびっくりするし、例えばガラスの水槽じゃなくて檻の中で飼われてたら「え、温度とかカビとかどうしてんの」ってびっくりするけど、まあ、知ってる通りの大きさのエンペラーペンギンがいるなあ、まあちょっと想像より太ってるけど、季節的なものかな、なんて思ったりさ。……嘘です。完全に心を奪われてますよ。陸の部分に立って、不動のまま遠くを見てるエンペラーペンギン、巨体のまま水の中を平行移動するように泳ぐエンペラーペンギン、まあいっぱいいるのに行動はこの2つしかしないんだけど、もうそれをいくらでも見ていられるね。ちなみに、次の日に水中フィーディングってのがあって、4枚くらい窓の付いた大きな水槽の中に飼育員が潜って、その窓ごとに違う解説をしながら水中で餌をやっていくイベントがあったんだけど。まあ他の家族連れとかは、窓の一枚目の前に立って一通り見たらそれで立ち去っちゃうんだけど、俺らは最初から最後まで食い入るように見てたら、気が付いたら俺らの他に誰もいなくなってて。ほんとに「はっ!」ってなるくらいびっくりしちゃってさ。飼育員さんに「……ペンギン、お好きなんですか?」って訊かれた。「……はい」なんつって。好きなんだろうね、きっとね。


 一緒に行った人は、エンペラーペンギンと同じ建物にいた、ホッキョクグマを推してましたね。なんか、希望者は食パンを投げてもいいよ、みたいのに手を挙げて参加してくるほどの食い付きっぷり。まあ確かにダイナミックなんですよ。ガラス越しに泳ぐ姿も見れるし。けどね、つがいとその仔の3体がいて、その仔ホッキョクグマの水槽になんか遊具として浮いてる、青いゴム製の筒、そうねえ、人間の縮尺での500mlのペットボトルをちょうど中のホッキョクグマの大きさに拡大したくらいの大きさ、かな。俺から見ると、それが完全に貫通式オナホールに見えるわけ。いつこのクマがこの筒を股間の前で素早く前後させるか気が気でないの。俺もちょっと前屈みになって胸チラで誘ってみたんだけど、始めてくれなかったね。せっかく俺の右乳首のところに、エロいメスヒグマの入れ墨を彫っておいたのに。


 そうねえ、1日目にはあと、イルカのショウも見ましたね。これは次の日に見たアシカとかのショウとも一緒ですけど、「たしかに芸は凄いが」っていう気持ちになるねえ。生きてくための餌は多分、別に普通に時間で区切って貰えてるんだと思うんだけど、じゃあもう、それ以上の餌を貰うために芸をする生き物たちは、もうよく分かんないなと思って。ショウの演出的には、飼育員さんたちとのユウジョウ!みたいなものを押し出しているんだけど、うーん、よく分からない。


 パンダね、いたね。すげえ普通にね。もしゃもしゃ笹食ってた。つか、熊だね、パンダって。あの目の周りの黒い部分あるじゃん、あれで目が大きく見えて可愛く見えるんだけど、このアドベンチャーワールド、相当近くからずっと見てられる(土日に行ったのに並んだりとか全然無い)のでよく見ると、あの黒い隈取り(熊だけに)(死ねば?)の真ん中に、本物の眼があって、それが普通に野獣の眼だよ。
 パンダも一緒に行った人が食い付いてて(そりゃ普通、ペンギンよりパンダだろう)、飼育員さんからの説明イベントを最前列で聞いてたりして、俺は後ろの方で離れて見てたんだけど、そしたらなんか成り行き的にパンダのウンコの臭いを嗅がされた。「取れたてで発酵もしてないし、草食だからそんなに嫌な臭いはしないでしょう?」とか言うけど、まあでも、見た目は普通に笹混じりの茶色いウンコだしさ。ギャグでも「食べてみてもいいですか?」とは言えない感じ。でも嗅がされるね。


 あとサファリパークかな、それも見て回った。1日目にはなんか電車みたいのに乗って説明を聞きながら、2日目には歩いて周ったんだけど。うん、これはそうやって2周回るのが正解かなーって思った。歩いてく方が近くで見れるし。キリンとか、もう数十センチ先に顔があるくらいまで近いのね。それでいて俺らが何をしてたかというと、鉄製のフェンスを執拗に舐めてるキリンに向かって「はぁ……はぁ……鉄、ちょう旨い……」とかアテレコしてた。ライオンとかも、さすがにそれは檻越しだけど、かなり近くで見れるし。まあ寝てるけどね。ごめん、ちょっと今パンフレットを見返しながら書いてるんだけど、キリンとライオン以外の記憶がほとんど無くて、自分の好きな動物の子供っぽさに自分でびっくりしてる。サイ、サイいたね! ごめん、正直、アドベンチャーワールドめっちゃ広くて、このサファリパークに行く時、2回ともすっごい疲れた後だったんだと思う。なんたって、実は2日目の最後に3回目としてもっかい電車のやつに乗ったけど、それは完全に2人で寝てたからノーカンにしてるくらいだもん。


 他、ふれあい動物コーナーみたいとこに雄のクジャクがいて。しかも羽を広げてたところに偶然出くわしたから「これって超レアじゃん!」と思ったんだけど、なんかそのまま数分くらい広げたまんまで「……しまい方、忘れたん?」って思った。しかもその状態で完全に道を塞いでて「……じゃまだ」ってなったねえ。気付いてると思うけど、もういい加減、書くのめんどくさくなってきてるよ。一緒に行った人がinstagram使いでやたら写真撮ってる人で、それを見ながら「写真なー」って思ってたけど、うーん、ブログを書くなら写真を撮った方がいいね。これはね。
 つうか、こんなに楽しく動物園を回ったのに、動物が可愛いという感情が、最後まで分からなかった。んー、進化の途中でこうなっているだけのものを美しいとか可愛いとか言うのって、意味があることなのか? って考えてた。うーん、いや、例えば一般的に動物の子供の眼が大きいのは庇護欲を煽るためとかいう怪しい節があったりして、それは意味のある可愛さなんだろうけど。なんか、たまたま美しい生き物は、なんで美しいんだろうな? ってずっと思ってた。というか、そういうことを考えてたなら、夜にでもちゃんとそういうことを同行者に話してみるべきだったな。冷や水かぶせるようで嫌だったけど、それもまあ舐めた話だ。


 まあそんなわけで(カバ? いたね。犬ね、いたね。フラミンゴいたね。鹿ね、いたいた。)1日目の最後、まあ土曜日のアドベンチャーワールド、幼児連れがえらく多いわけ。そいつらがまあ、ショウの途中だろうとペンギンの水槽の前だろうとぎゃあぎゃあ自由に騒ぐんだけど、全然それらが気にならないくらいのスケール感つうか、そういうとこでしたねえ。一緒にいた人がぽつりと「ここに来ると、子供が欲しくなるね☆」って言われました。これから合宿所で隣のベッドに寝る人にそんなこと言われて、ボクも思わず尻穴をすぼめてしまうね。


 んで、アドベンチャーワールドを出て、街中で飯食って温泉に入って、また宿に戻るのね。その途中、まあこの辺は田舎と言えば田舎だから、星空がえらい綺麗に見えるわけ。あのさあ、京都とかで北斗七星を探そうと思えば、簡単に見つかるじゃん。逆に北斗七星以外の星が見えないから。ところがさあ、南紀白浜だと、もう一面の星空で、普段見てる星空より全然星が多いから、「こんなにあるうちのどれとどれを繋ぐと北斗七星になるんだっけ?」ってなるもん。死兆星とかいくつあるんだよって。せっかくこれから同衾するに当たって「アレガ/デネブ/アルタイル/ベガ」とか言って気分を盛り上げようと思ったのに。
 ああ、そうそう、夜ね、アンゲームやりましたよ。アンゲーム、えっと、俺が持ってったのはカード型のやつで、なんか裏に質問の書いてあるカードを1枚ずつめくっていって、ただその質問に答える、一緒にやってる人は自分のターン以外の時はずっと黙ってないといけない、っていう、なんかカウンセリングとかで使うやつらしいんだけど、その質問の内容がえらくエグくてシュールなのね。「家から閉め出されたことがあったらその時のことを話して。」とか、「あなたにとって生きる意味は何だろう?」とか、「あなたが見た怖い夢を教えて。」とかカードに聞かれてマジで答えるの、エグいでしょう。それが1周回って面白いかなとか思ってたんだけど。まあそれが、俺は「最近『これ買ってみよう』と思ったCMはなに?」とか「子供の頃に好きだった童話は?」とか軽めのやつばっか引くんだけど、相手ばっかり「あなたのお母さんは、あなたのことをどう思っているだろう?」とか「自分の長所を3つ挙げてみて」とか、えらいエグいやつばっかり引いて「……これは危険なゲームだ」って思ったね。ちなみに「子供の頃に好きだった童話は?」で俺が出したの、正式な書題は長新太『ノンビリすいぞくかん』らしいですよ。久々に思い出したけど、これがえらくシュールでな。最高に頭おかしい(褒め言葉)んですよ。


 次の日は、朝からちょっと、その保養施設についてるプライベートビーチみたいなところの浜辺を歩いて、打ち上げられたぶよぶよのクラゲの死体を拾って、一緒にいる人に「クラゲぶつけゲームでもする?」なんて言ってみたり、あと一緒にニチアサ観たりして、で2日目のアドベンチャーワールドに行って遊び倒して、帰りのバスに乗りました。いやあ、ほんと楽しかった。一緒に行った人も、まあこの人と一緒で良かったって思いましたね。まあプリキュア一緒に見れたりとか、気を遣うのも大体でいいとか、それでいてマジでアンゲームが出来たりとか、ついったに適当なことも書いてみるもんだな、って思って。心地良い疲労感のままバスに揺られるのね。いい加減疲れてるし、丸2日も一緒にいるからさすがに話すこともなくて。で、俺も一緒にいた人も自分の携帯を取りだしてな。で、同行者は京都にいる年上の彼女にぽちぽちめるめる、一方俺はアイマスのエリアゲームに2分に1回GPS送りながら「まだ田辺エリアかよっ」とか言ってて、さ。「あれ?」と思って。「さっきまでこの人と一緒に楽しかったのに、今のこの格差は何だ?」と思った。えー、ダイアログインザダークは、女の子と行こう。