森田季節 『ノートより安い恋』

 百合ものの短篇集。まあSFっぽいのとか、お得意の土着信仰ものとか、色んな引き出しから自由自在に取り出してみせる。語り手の頽廃的で耽美な乾いた文体と、それでは抑えきれない、少女の肉体的な激情とが疼痛のようで素晴らしい。一つ選ぶならどれだろうなあ、『少女よ、本を投げろ』『相思相愛のこわしかた』あたりが好きなんだけど、でもそれぞれ、好きなところの他にちょっと柔らかすぎるだろうっていう部分があって、完全に絶賛するのは難しいけど。その点だと『魔女は言葉を投げ捨てる』かな。

ノートより安い恋 (Yuri‐Hime Novel)

ノートより安い恋 (Yuri‐Hime Novel)