谷崎潤一郎 『蓼食う虫』

 浄瑠璃等の日本文化の詳細を事細かに描写しながら、グダグダの夫婦の離縁話を書く。その、人形芝居とかの日本文化の描写、それは当時の離婚に対する考え方も含めてだけど、その緻密な描写を読むか、あるいは作者の夫人譲渡事件とかに絡んで読まれたり、最晩年の『鍵』辺りに繋がる系譜があったり、女性を無闇に(というか人格を無視して)神聖視する意味ではマゾ側からコントロールする後の一連のSM小説に繋がったりなど、まあ作者を理解する上で読むなら、わりと意味があるかな、というところ。

蓼喰う虫 (岩波文庫 緑 55-1)

蓼喰う虫 (岩波文庫 緑 55-1)