イタリア2-5日目

 京都のうちの近くにN○AN○Aっていう飯屋があってな。以下、別に貶すわけではないから実名を出してもいいような気がするけど。パスタとか出してるし、まあイタリアンなんだけど。それが、入り口に石のアーチを架けてたり、オープンカフェ部分に植えてある植物の緑色の元気さが半端無かったりで、まあ銀閣の近くで日本家屋っぽいのが多い中でちょっと浮いてる感じがしてるんだ。そもそも店名のノアノアって響きが既に面白いじゃん。行ったことないけど、俺の中ではネタ店扱いだったのね。
 それがだよ、ほら、俺、今、イタリア来てるじゃん。まあ国境近くの街でイタリアの中でも変わってるとか言われてるところではあるけど、まあイタリアだ。で、何が一番目に付くかというと、石垣というか石積みなんだよね。トンネルとか家の塀とかの。どう違うかというと説明しづらいけど、見た目の古さと、あと日本の城とかだと大きさが不均一な石垣だったりするけど、こっちのはそれよりずっと規則正しく並んでる気がする。色と大きさが揃ってて見た目が古いから、とても正しく年をとっている、という印象があるわけですよ。
 あと、和辻哲郎が「欧州には名の無い雑草がない」なんて言ってたけど(『風土』だったかな)、まあ確かに芝生として刈り揃えられてるか、路傍の草でも何かしら花をつけてたりして、どうでもいい感じに生えてる薄緑色のアイツがいない、んだよね。それで、今日の授業が終わって帰る途中に(今こっちは夕方ね)、近くの有名な庭園の中を通って帰って来たんだけど。まあウンコが漏れそうだったのと、あとRPGでも見かけないくらい道が入り組んでて(こっちの方角に向かって抜けたいと思っているのに、そっちに直接向かう道はなくて、分かれ道を右右まっすぐ左、とかをやる)あんまりちゃんと見てないけど、なんかね、やっぱ緑が濃いんですよ。結構鬱蒼とした庭園という感じ。
 その庭園を抜けて、そしたら俺のいる宿舎の近くにある、まあ地元民向けのオープンカフェみたいのあって、もちろん塀は石積みで。なんか見たことあんなこれ、と思ったら、どうやら俺の脳内のN○AN○Aセンサーが反応してんだよね。「これ、N○AN○Aで見たことある!」っつって。おいおい面白店扱いしてたN○AN○A、さては本場イタリア的には、かなり正解に近い気がすんぞ。まあ、味が正解かどうかは、京都に戻ってから行ってみないとわからないけど。

 まあそういうわけで、イタリアはトリエステ、研究所の宿舎に着いてから4日目の行程が終わり、残り7泊9日くらいか。わりと今のところ不自由なく過ごしてますよ。
 まあやっぱり着いた時は時差ボケが凄くて、最初の講義2日分くらいはろくすっぽ聴いてなかったんですけど、昨日の夕方から12時間くらい横になったらなんとかなりましたね。いやいやいや、元々寝たい時に寝てるような生活をしているから、時差ボケとかあんま関係ない体質なんだと思ってたらもろに食らいましたよ。ねー、せっかく昨日の夕方からはレセプションっていうかパーティみたいのがあったはずなんですけど、あまりに眠くて行けなくて、あーあーほんと残念だなー。アイムソーリーバットアイハブアヘディックソーアイワズスリーピングザットタイムだものなー。そして今日からは絶好調。何故でしょうね。いっぱい寝たからですよ?
 宿舎の部屋も特に不自由ないんですよ。まあ便所の水洗が俺のウンコを1回で流しきれないことに関しては思うところがありますけど。そう、初日に授業を受けて部屋に戻ってきたら、便所に血便が浮いてて「だ、誰のや!」って思いましたけど、2日目も今日も、流しても半分くらいは戻ってくるというのを目にしたら諦めがつくようになりました。血便はいつものことなので心配は要りません。

 つかね、こっちの飯屋、ちょっとマジすぎる気がする。空港とか、宿舎備え付けの食堂とか、基本的にはどうでもいいはずじゃん。それがさ、なんかマジっぽい人がかなり真剣に作ってる気がする。空港のとか、もっとどうでもいいあんパンとか売ってくれればいいのに、コック帽被ったやつが「出来たて超盛るよ!」みたいに構えてて、ちょっと近寄れなかった。宿舎の方も、基本的にはうちの大学の学食みたく、適当にセルフサービスである料理を選ぶんだけど、なんか、まず料理の種類が主菜と主食と副菜とでプレートの上の3,4食を、それぞれ3種類くらいの中から選ぶんだ。少ない感じするけど、まあ日本のがおかしいんだろうな。しかも、それで組み合わせ論的にNG枠がある。適当に食いたいものだけを本能的に選んでると「その組み合わせはおかしいだろ」てな感じで怒られる。「魚にパスタ被せろってか。ふざけんなよ」「だよねー」とかいう感じになる。しかも、基本的には職員も英語を使うんだけど、日常的にはイタリア語だから、ちょくちょく混じってくるんだ。で、俺もその「だよねー」とか「マジかー」とかは日本語で口走ってるから、日英伊が飛び交う感じになっててかなりカオス。
 んで、宿舎の料理自体は、なんか意外と素材勝負な。「ぱすたぷりーず」「おんりー?」「いぇす」「ぱるめざん?」「ぷりーず」とか言うと、皿いっぱいにパスタとチーズ載って出てくる。それでなくても、ほうれん草って言ったらほうれん草だけのものが、そうだな、TENGA1つぶんくらいの大きさに盛られて出てくるんだ。不味くはないし美味いと言えば美味いのでいいんだけど。いいんだけど。
 あとは、自販機のチョコ類が安い。M&Mのあの袋が65セントくらい。他の自販機だと、飲料水が500mlで35セントとか、日本で水買う気が失せる値段ではあるな。コーヒーはイタリアの文化的に1杯が超少ないのでやや割高感。美味しいけどね。

 あーまー大体そんな感じ。休み時間を利用して、谷崎潤一郎の『マゾヒズム小説集』を読んだ。日本では人前で読むのが憚られるが、こちらではなんともない。『空の軌跡』も3時間くらい進んだ。勉強はしてない。切れ痔なう。