久我真樹 『英国メイドの世界』

 中世からヴィクトリア朝、そしてわりと最近に至るまでの英国の、いわゆるメイドさんを含めた使用人の実態について、手記や統計資料などの1次資料をまとめた本。職業としての多様性に迫るために、複数の役職を備える大きめの屋敷での使用人事情の話が多くて、確かにその辺は、単純に煌びやかな世界の裏事情として興味深い。けど、ずっと前提として備える、主人と上級使用人と下級使用人、更にその内部での序列という歴然とした階級社会、それに序盤の方に多く描かれる下級使用人の、人間扱いされないレベルでの厳しさみたいなのは、いわゆるメイドのイメージを払拭するのに充分なインパクトがある。

英国メイドの世界

英国メイドの世界