ドストエフスキー 『永遠の夫』

　うだつの上がらない寝取られ夫が、その妻が死んだあとに不倫相手を訪ねていったりする話し。その寝取られ夫とは別に語り部がいて、しかもこいつが当の寝取った側だったりするんだけど、当てこすりをしてくるたびに語り部側がこてんぱんにやりこめてしまう、というかあまりにうだつの上がらなさで自爆してくのね。それで、なんか真意のとれない会話が挟まってたりしていくうちに、その寝取られ夫が不穏な感じになっていく変な緊張感みたいのが、凄くロシア的というかドストエフスキー的というか。この作者は久々だったけど、幻覚が見えるくらいの、内側に向かっていく陰鬱さみたいのがやっぱいいね。

永遠の夫 (新潮文庫)