ジャレド・ダイアモンド 『銃・病原菌・鉄』

 結構書評界では高名な本ですな。人類史の話。わりと地政学とかに近い感じだけど扱っているのは先史あたりだったりで、その、今ここまでの地球の歴史だとアメリカとヨーロッパ辺りが覇権を握ってきたわけだけど、それがどのくらい必然的なものだったのか、例えばゲームのCivみたいに、もっかい1万3千年前にこの地球というマップを与えられた時に、また欧米が強くなるのか、みたいな話をかなり科学的な手法で説明している。最終的な要因となるのは書題にもある銃、病原菌、鉄を味方にすることなわけだけど、それを手に入れるまで、ってことね。元が洋書で、やっぱ下敷きにはかつての人種問題の正当化に対する、別に白人が人種として優れてたからこうなったわけじゃないんだぜ、というのがあるので、まあちょっと日本人が日本でのほほんと読むのとは微妙に意味がずれる。
 大陸の形と棲んでる動物とかで食糧生産のしやすさが決まって、基本的にそれが勝負の分かれ目、みたいなメインアイディアを述べる上巻は鮮やかで面白いんだけど、それをニューギニアやアフリカ、アメリカ大陸に当てはめていって各論を述べる下巻は、かなり重複があったりでたるい。まあ1つのアイディアが地球上のあらゆるところに応用が効くのが凄いんだから、同じ話が続くのは当たり前なんだけど、それにしたってもう少し本として整理して欲しいところ。こういう分野でこういう手法を使ってちゃんと学問としてやってる人もいるよ、凄いね、というのが一番の収穫かね。

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎