チェーホフ 『桜の園』

 旧訳。脚本形式で書かれた、チェーホフが自称するところでは喜劇。だけど初演当時の劇場側(もちろんロシアの人だ)ですら没落貴族の悲劇ととったという、まあそれを時代を経てしかも翻訳を挟んで、まあユーモアとしての面白さがわかるわけもなく。うーん、読んでて、台詞の合間とかに『フルハウス』のあの笑い声、ラフ・トラックみたいのが聞こえそうな感じ、程度の「ここオモシロだ」ってのはあるんだけど。まあ、戯曲だけあって全体を俯瞰するようなちょっと離れた目線から、それこそ悲劇と思われるほど哀しい人間模様を(理想を語りながら一生懸命、どっこい生きてるみたいな)著者一流の筆致で書かれると、乾いた笑い系の面白さはちょっとあるか。

桜の園 (1962年) (岩波文庫)

桜の園 (1962年) (岩波文庫)