ジッド 『狭き門』

 幼馴染みでお互い相思相愛なこともわかってる2人の片方、アリサって女の方が頑なに宗教的な清らかさを貫いて、ジェロームっていう男主人公を拒み続ける話。作者の自伝的な要素も多分に含まれていて、その清教徒的なものへの批判的な意味のある作品、なんて言われたりするけど、聖らかに天上的な愛を目指し続けるアリサが綺麗で、アリサのいる田園風景が輝いていて、普通に読んだら多分そんな批判は(1人称であるジェロームの視点からはちょっとわかるけど)気付かなかったと思う。天も地も選ばなかったジェロームのヘタレっぷりの方がよっぽどイラつく。そらまあアリサはアリサで、口先ばっかで実際のジェロームのことなんざろくすっぽ見ちゃいないっちゃそうなんだけど、でもそんなんジェロームが高みを目指さなかったせいじゃんねー。生き方の方向性としてアリサの志向性は好きなんだよなー。

狭き門 (新潮文庫)

狭き門 (新潮文庫)