ぱれっと 『ましろ色シンフォニー』

 何も考えなくていいいちゃラブゲーだって聞いて買ってきたんですよ。シナリオライターも安心の布陣、個人的には特におるごぅる目当てだったわけですが。そしたらまあ、メインヒロイン4人(+紗凪)の完全にキャラゲーでどのシナリオも甘々も甘々で大変素晴らしいんですけど、なんか全然それだけじゃなかった。攻略順になんか書くと。
 周りの空気を感じ、他者を気遣うことの優しさを書きながら、それを主人公の個人的な特質として批判的にすら書くことでそこを深くシナリオの材料となっていたのが印象的。野良メイドシナリオの前半、主人公に惚れ込むまでの話をアンジェ視点で描くところなんかは、主人公に感じるアンジェならではの労しく思う気持ちに泣きそうになるくらい、この2人の歪みに吐きそうになるくらいの強さを持っていて、いや凄かった。ツンデレではない高貴落としということになるのか、新吾さんかっこいいです。アンジェルートはその後の後半も、舞台の雰囲気を生かし切った、芝居がかったようなシナリオ運び、その中で行われるアイデンティティーの解体と模索と再定義、つまり創造というよりは発見、良かったです。
 桜乃はサブキャラとしての他のルートでの立ち回りを見てると、新吾をよく見てそれに合わせた動きが出来るすげえいいキャラなんだけど、その点でいえば桜乃ルートでは新吾の「空気を感じる」歪みをどこにも転化させられずに、シナリオとして何も言えなかった感はある、かね。
 みう先輩シナリオでは、"歪みの是正"としてきちんと成長を遂げた紗凪が1つの軸ではあり、あとはおるごぅる氏シナリオらしい「6枠! みう先輩回想6枠っすか!」といい「腋壺! 腋壺!」といいですな。愛理ルートはもう言うことないです。このエロゲの全部を持っていけ! いやほんと、"2人"になって"変わる"ことという主題に対し「変わること」それ自体をメタ的に堂々と扱うメインヒロインっぷり、既存の言葉に引っ張られないで2人だけの関係を探していく過程、このエロゲのテーマの全部を体現するメインヒロインのルートがちゃんと魅力的に書かれるってのは本当にいいことですよ。
 絵もわりと癖は強めですが、今回の舞台、きらびやかなお嬢様立ち並ぶ中ではぴったり(桜乃とか愛理の雪の中のとか、背の反らせた絵がとても好み)、BGMもいいし、OP曲の『シンフォニック ラブ』は「なんか色々混じっててそれでいて何でもなくなっててどっかヘンな曲」って感じで癖になるし、あと挿入歌の『さよなら君の声』が王道でわりとツボ。

ましろ色シンフォニー

ましろ色シンフォニー