紅玉いづき 『ガーデン・ロスト』

 それぞれに傷ついた4人の少女が、放送部の部室に集う物語。彼女らの問題、もちろんそれは人間関係が主なものでありながら単純な男女関係などの枠に納まったりするものでもなく多様かつシリアスで、またその部室の中にすら軋轢が存在したりもしたのだけれど、それでも彼女たちが最後に逃げ込んだ"部室"という空間を描く。特に四部構成の最終部、卒業に際して、これまで彼女らの関係に一番ドライであったように見えたシバにその失われる"城"への悲痛な寂寥を叫ばせたことからもわかるように、作者はその部室という彼女たちの居場所、ひいては問題だらけのナイーブだった彼女らを、振り返るという形をもって悼み、肯定しているのだ。

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)

ガーデン・ロスト (メディアワークス文庫)