Liar-Soft 『SEVEN-BRIDGE』

 WW1前にあったオスマン帝国とのもの凄い戦争と黒死病の影響で欧州に人間が入れなくなった世界で、人の心を読み取れるという能力を持った主人公クゥ・クランが北京で、そこで「黒の切符を持った者のみが乗れる欧州行きの列車」と人口に上っていた列車プレステ=ジョアンに乗ることになるところから始まる旅の物語。
 とにもかくにも序盤から中盤の、主人公が積極的な行動原理を持つようになるまで辺りの文章運びはとても良くて、まあそっから先も一応その主人公の物語としてはこれでまとまっているんだろうけど、サブキャラで明らかに最後まで物語が拾い切れてないやつがいたりで、まあよくこの作品を評する時に使われる「未完成品」だの「続編希望」という言葉も仕方ないのかなというところ。作中で時折地の文に挟まる、モーラの強く意識された詩が、プレステ=ジョアンの走行音を刻まれたベース音としてとても聴き心地が良かったり、あとはその、主人公の能力である読心に関する演出なんかでもボイスの使い方が印象的なんだけど、中盤以降で突然そのボイスがパートボイスになったりなんかは完全に目に見える形での後半の瑕疵になってて、ここまであからさまだとなあ、というところ。
 物語としては全然ありだけど、まあ「もっと出来たんじゃ」という意味での残念感は強い。

SEVEN-BRIDGE

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