岩城宏之 『フィルハーモニーの風景』

 著者は3年くらい前に亡くなった世界的指揮者。ウィーン・フィルやベルリン・フィルといった超一流オーケストラを指揮した経験からのエピソード、そしてオーケストラを支える裏方やホールに注目した話が中心。
 前半のオーケストラ団員の話は、まさに「音楽家」というような人達と、その人達にとってすらこの2つのオーケストラが持つ特別な意味、というようなものが伝わってくる、ユーモラスでありながらも音楽に真摯であるエピソードで、両オーケストラについてのとても親しみやすい紹介になっているかと。後半の裏方の話は、特にハープ専門の楽器運送会社の仕事に1日密着した時の話が面白い。
 こういった文筆業での読みやすさでも評価を受けた著者だけあって、ほんとにさくっと読めてかつ楽しい一冊。

フィルハーモニーの風景 (岩波新書)

フィルハーモニーの風景 (岩波新書)