んなこたないですけども。

えー、京大の院試も2次試験、面接ですよ。俺は第一希望を素粒子論、第二希望を原子核理論として出したのですが、まあ筆記の結果とりあえず面接もやりましょうと言われただけなので、その第一希望で通っているのかどうかとかは一切わからないというか、まあ素論の方には足りてないんでしょうな、というところまでが前回までのあらすじです。で、その面接が今日ありました。面接ではとりあえず最初に、7分間自由課題で物理関係の発表をして、その後は適当に質疑応答、ということになってます。あ、特に言われてないので以下書きますけど、院試の面接の中身に守秘義務とかあるんだったら言ってくれれば消しますんで。
まあ俺の順番になって会場の教室に入っていくと、普段の授業とは逆に教員陣がずらっと席に座ってるわけですな。まあ普段ったってもう丸1年くらいまともに授業なんか出てないからあれですけど。まあ別にこれ自体は北大の院試でも見た光景なのですが、今度の京大の場合は4年間授業を受けた面々、特に理論物理の人達ですから俺の見慣れた紳士淑女の皆様がずらりと座ってるわけで、この図はちょっと思いのほか面白いかもだな、とか思ってるうちにまあ大して緊張なんかしなくなってるのですが。あのねえ、あの人たちずるい。ずっこい。ずるっこですよ。俺が普段おしゃべりするような相手がいないから最初に7分間も思う存分話聞いてもらっちゃったら楽しくなっちゃうに決まってる、ってことを完全に利用して本音を聞き出そうとする。ええもう完全に罠にかけられましたよ。質疑応答は最初はその喋った物理の問題周りで色々訊かれるわけですが、まあ大方は和やかに進むわけですな。一つだけ俺の理論ゼミの教員が「そのプログラミング、コードは何?」「C言語で組みました」「ふーん、MAPLEだったら一瞬なのにね(笑)」っていうやり取りがあって「あ、こういう日でも俺に対してはキレッキレなんすね」とは思ったけど。恐らくですが、リラックスすることと、ふざけてガードが緩くなることは違う、ということを俺は知らないんでしょうな。「その問題、昨日の晩やったの?」「んなこたないですけども」だって。原文まま。よもや院試でタモリとな。
まあほんとに俺って喋ってると楽しくなっちゃう病気なんだろうね。その後も普通に素粒子論への志望動機を訊かれて、だんだん普通に雑談みたいなテンションで喋ってたらいつの間にか俺、唆されて黒板に

こんな図を書く羽目に陥ってますわ。なんだこれ。院試ってこんなんか。「それ迂回して素論とおらずに超ひも理論できるやんな」「……ははは」「その図で原子核はどこ?」「ここ……くらいにありますけど」
そんなおっぺけぷーなボクの面接ですが、なんかところどころでその、俺の第一希望の素論じゃなくて、第二希望の原子核側に寄せていくような質問が多くなっていくわけですな。俺が取り上げた問題も「原子核に行ったらこういう共鳴みたいのいっぱいあるよ」とか言われたりするのね。あのさ、飴につられて知らないおじさんについて行くキッズじゃないからさ、「わーい共鳴だー」つって原子核行きたくなるとか、そういうのはあんまないからさ。あと志望動機も原子核の方ばっか突っ込まれるけど、基本は「原子核の方の専門の勉強をしたことがないので具体的にやりたい問題はまだないですけど、少し実験で見られるような話にも興味はあります」で押し切るしかないんだよね。その後もちょくちょく原子核寄りの話を訊かれるんだけど、そっちを訊かれれば訊かれるほど、俺が原子核にそんな興味ないってことが露見していくんだよね。最終的にはそれまでの和やかな雰囲気に騙されて、北大素論(「ここ以外に受けた大学を参考までに」「北海道大学素粒子論で」「えっ、そこだけ!?」なんだ俺、北大の素論も危ないと思われるような点数なのか)と京大原子核の優先順位付けろって言われてうっかり北大素論を選んでしまったりなのですが。やーばいっすわ、京大院試。みんなも気をつけて。