岩城宏之 『指揮のおけいこ』

数年前に亡くなってしまった世界的指揮者、岩城宏之が書く、"指揮者って結局何してんの?"に始まり、指揮者の職業病や楽譜を暗譜すべきかどうかなど指揮者という仕事について、各トピックを短くまとめている。一応、指揮者になりたい人の為へのレッスンという体をとってはいるものの、まあもちろんある程度この分野に興味を持った一般向けのエッセイとして面白く読めるようにはなっている。ただ、軽妙な文体のままかっこいい燕尾服の話や著者の病歴なんかに話は逸れていく中にさらっと著者の人生観とかが混じってきてて、これを書いた時点で60歳を超えていた巨匠の、軽い文体の裏にある"本当に言いたいこと"が微妙に見え隠れしているような、そんな感じもある。必要ならそこを自分から積極的に見出さなくちゃいけない、と言う意味では確かに"おけいこ"ごとに通ずるか。

指揮のおけいこ (文春文庫)

指揮のおけいこ (文春文庫)