泉鏡花 『鏡花短篇集』

物語や旅行記、随筆などの小品が集められているけれど、やはりどこをとってもこの筆者一流のうるおいとリズムに満ちた文体が気持ちよくて、またちょっとだけ他の人より深い世界を見ているかの様な世界観も独特。個人的に好きなのは、庭の雀の話の『二、三羽――十二、三羽』。前半の、日常の何気ない風景を格別の愛情をして文章にしていく様、そして急に非日常的な出来事に溶け込んでいくような後半と、泉鏡花で俺の一番好きな部分が集まっててすごくいい。

鏡花短篇集 (岩波文庫)

鏡花短篇集 (岩波文庫)