武者小路実篤 『幸福者』

理想化されつつも人間らしい「師」の言動を弟子の立場で書いたという体をとる小説。思想を理想化して小説に語らせるというのは作家としての当たり前の手法だろうしそれはそれなりの説得力を持つものなんだけど、なんか理想化するあまりにそれに対する悪的な存在も「師」の側から完全に切り離された抽象的な存在になっている辺りが個人的にはしっくり来ない。

幸福者 (新潮文庫 む 1-7)

幸福者 (新潮文庫 む 1-7)