幸田文 『きもの』

半自伝的小説、なんていうけど。「きもの」を通じて追想するように進んでいく女性の半生記。ドレスコードに近い、和装の持つ文脈に象徴される形で少女の成長が説明されていくから、着物に対する語彙が豊富だよね。衣食足りてというように、礼節以前の常識によって語られる言葉が切迫した意味を持つ。小説として筋が面白いかと言われると微妙だけど、その緊々とした言葉で率直に語られる"人間"は、今でも通じる。

きもの (新潮文庫)

きもの (新潮文庫)