武者小路実篤 『愛と死』

『友情』と似たような筋なんだけど、戦う相手が今度は恋人の死。そして後半のその、戦うことを決めた主人公の叫びがめちゃめちゃかっこいいのも『友情』と同じ。序盤の甘甘だけど生き生きとした上品な恋愛は、結ばれる分こっちの方がなお生彩を帯びているような気もするけど。その恋人との馴れ初めは自然に惹かれるままに、でもその自然の運命に恋人が殺された時に「生れかえった」と言う主人公の、怒りのままの決意は本当にかっこいい。

愛と死 (新潮文庫)