結城浩 『数学ガール フェルマーの最終定理』

全体の構成が、洗練されているというのかなんというのか、サブタイトルの『フェルマーの最終定理』を味わうための道標を辿っていくために、なるたけ無駄を省いた構成になっているのが読み取れる。具体的に言うと、「互いに素」をピックアップしてるのに中国剰余定理やユークリッド互除法の話をしない本、ってのは初めて読んだかも。普通なら寄り道したくなる程度には綺麗だよね、あれ。
序盤の整数の話が多いところは個人的に、受験生時代の散々『マスターオブ整数』をやった記憶が残ってて、見た瞬間に勝手に問題文を脳内翻訳して解けちゃう感じはあるんだけど、それの根底にあるのは「今何を変数としているのか」という意識で、んー、つまり、独立変数の数を常に意識してるからこそ、問題文に書いてある性質を文字式に翻訳したり(文中で言う「数作文」ね)、次々と変数を導入して置き換えたりという考え方が出来る。この辺りの考え方は8章の「僕」の考え方にもずっと通じてるし(特に8.3.4)、素因数分解の一意性だとかZ/2Zの同型(全単射準同型)の話だとか、あるいは文中の言葉で言う「ピタゴラ・ジュース・メーカー」や「テレポート」などなど、特段の説明もないのが不思議なくらいに、俺の中では読みながら意識させられたテーマだったかな。
数学ガール/フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)