池内了 『物理学と神』

「神」という比喩を使って物理の哲学的な部分を中心に導入する本。だからまあ宗教と学問との兼ね合いだとかの話はないし、歴史を追う形になってはいても中世のイスラム科学にも一切触れてない。多分だけど、著者は宗教とか神学とかあんまり興味ないのかもな、という感じはする。知らんけど。
「神のサイコロ遊び」の比喩を多く使ったり宇宙の始まりの話もしたりしてるのに観測問題にあんまり触れんのはなんなのかな。著者は人間原理を嫌っているみたいだけど、この辺りを突っ込まないと人間原理を否定しようにも議論にならない部分があると思う、かな。まあこの辺りの宇宙論が著者の本息だから一番の読みどころであったことは間違いない。いかんせん物理の基本的解説を読み飛ばして引っかかる比喩なんかばっかり取り上げたから若干否定的な感想になるけど、終始定性的に徹したその解説に、あっちゃこっちゃ色んな分野に飛ぶ語り口は合う人が読めば面白いんじゃないかな。
物理学と神 (集英社新書)