古川日出男 『アラビアの夜の種族』

メタメタフィクションというのか入れ子というのか、物語の重層構造や(個人的にはなじみの薄い)イスラム文化の持つどこかミステリアスな雰囲気を踏まえた年代記的な物語の物理的な厚みと、最強設定の主人公らがガンガン魔法打ち合ったり色に溺れたりという卑近な中身が合わさって、軽くないライトノベルというか、不思議で面白い本になっている。触れるだけでなんだか負けた気になるのであれだけど、一番外側の入れ子構造に関しても、どんどん砕けていく文体やうるさいくらいの訳注でわりに明示されてたけど、それでも確信が持てない程度にはなってるし、なんといってもこの物語でそれを可能とする著者の引き出しの広さがすごいわな。あとはそのメタを貫く本というテーマは1人の本読みとしてわりとニヤニヤ。
アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)
アラビアの夜の種族 II (角川文庫)
アラビアの夜の種族 III (角川文庫)