高橋源一郎 『一億三千万人のための小説教室』

小説の書き方を扱った本なんだけど、それだけではないし、小説を書くための具体的なテクニックなんざ1つも書かれていない。著者がやったのはまず慎重に手とり足とり「小説」との付き合い方を教えること。まるでこの本自体が著者の小説であるかのような繊細さと親しさで、小説を楽しむこと、そして真似をすることを訴えかけてくる。それができてあとは自分に書くべきことがあれば書けばいいじゃない。そういう意味でこれは「書き方」にこだわらない包括的な「小説教室」なんだな。まあ結局この本を読んだ俺はまた何かを書きたくなったんだから、最高の書き方教室の一つであることは間違いないと思うんだけど。んで付録代わりについているブックガイドもなかなか楽しそうだ。小説自体が好きな人で、でも書かなくちゃいけない切迫した理由が特にあるわけでもない人向けの本。
一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))