サイモン・シン 『フェルマーの最終定理』

読む前に想像してた方向とはだいぶ違った本だったな。フェルマーの最終定理が遂に解かれたその過程を追ったドキュメンタリー。数学そのものを扱っているのはせいぜい前半分くらいで、後半分は完全に数学者のヒューマンドラマ。まあこのドラマがまた良く書けてるんだこれが。隠遁していた人の努力がようやく報われるという、なんか日本人好みの結末はまあ、月並みな言い方だけど感動、だね。
ただ、数学的証明の厳密さが持つ美しさと厳しさなどは充分伝わってきて良かった。数学も悪くないなという感じ。あと、代数というか数論は日本のお家芸なので、谷山-志村予想(定理、になったわけだ)を始め、結構日本人の名前が出てくる。科学に国境はないからどうでもいいといえばいいことだけど、定理の名前が漢字だっていうのはやっぱりちょっと気分がいいものだよ。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)