蔵本由紀 『非線形科学』

授業の参考書。著者は何年か前までうちとこの大学にいた人で、最終講義の記録がここに置いてある。本の題名が内容そのまんま。入門書、という範囲を超えず、定性的な説明がなされていてなんとなくの概観が掴めるかも。

物理のこれまでの大まかな流れというのかな、出来るだけ対象を細かく見てこようとしてきた側面があって。原子から原子核クォークやら超弦やら。まあ要は細かいものの挙動がわかればそれを重ね合わせて全体の挙動がわかんだろ、という考え方があるんでしょうね。勿論単純に方程式が解析的に解きやすいっていいう側面もあるけれど。んでもこの重ねあわせっていう考え方がそもそも線型特有のものだし、その要素が幾つか集まることで初めてあらわれる挙動というものもあるしってことで、ここら辺に線型による理解の限界がある。というか実際には線型というのがただの近似でしかないというのが殆どの場合。

つーか、非線形の方程式が出てきたら諦めて数値的にゴリ押し、というのが定石だと思ってたから、かなり解析的に解こうとしてるんだなあ、というのは思った。あと、非線形って突然変な項が効いてきたりするから一つ一つの現象ごとに方程式出して解いてんのかなあと漠然と思ってたけど、モデル化するのがやたらに巧いんだよなあ。物事の本質を見抜いて類似性のあるものと纏めてモデル化。普遍性を見抜いて適用するのが科学だとしたら、下手な素論よりよっぽど科学してる。

この本、他の本と絡めて読むなら、他の物理学の本よりも『生物と無生物のあいだ』の方なんだろうなあ。そんな感じで、こんな物理があるんだよという入門書としてはかなりいい本だと思う。少なくとも1年前の俺にはお勧め。んー、でもまあ。知り合いにknt.さんがいれば事足りる気もしないでもない。あの人の話面白いからなあ。あと、これ読んでも特段授業には役立たない。今日すっげえ眠かった。あーでもまあ、パイこね理論の話はちょっと出たか。いやしかし眠かった。

非線形科学 (集英社新書 408G)