結城浩 『数学ガール』

ラノベ風味な青春ストーリーに乗せて数学をやる話。学問としての数学ではなくて、クイズとしての数学。対象は高校生くらいかな。どの問題にも「美しさ」と「感動」を兼ね揃えた解答があるので、読んでるときの感触としては受験参考書の『ショートプログラム』あたりに近いかな。あれはグラフやら使った幾何的な解き方の「感動」だったけど、この本は解析とか代数の話が多め。いずれにせよ、問題に対してまず手を動かすことが大事ですね。

書いてある数学自体も面白いけれど、それ以上に「数学の楽しさ」が強調されてるのがポイントでしょうな。必要以上に「僕」やミルカさんの孤独感を出さないのは悪徳商法っぽくていい感じだ。理系男子は孤独だぞう数学好きなんか変態扱いだぞうこっちのみーずはあーまいぞー。とにかく、数学の楽しさが相まって結局、さり気なく「数学ガール」が「論理的思考ガール」にもなってる本だと思う。

あと。読みながら思ったこと。メモ帳から抜粋。第3章に複素数の絶対値の話があるといいかな、と思った。絶対値こそが円の「本質」なわけだし。第4章のフィボナッチ数列の一般項では分母の√5が消えるのはx^n-y^nがx-yで括れることから明らかだね。
個人的なところでは、母函数の話とたたき込み、あとはバーゼル問題辺りは初見だったので面白かった。特に正弦を因数分解しちゃうところ。ほんとを言うなら、もう1つ上の世代向けにも一冊書いてほしいくらいだなあ。ε-δ論法で一章まるまる使っちゃうような奴を。

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)