カポーティ 『ティファニーで朝食を』

映画版とは大きく違う、と言われても観ていないので知らない。表紙はどう見てもヘプバーンなのに、訳者あとがきでは映画版をくそみそに言っていたりと、なんだか逆に興味が出てくる。ふしぎ。

表題作。ホリーの自由気ままな性格と生活に魅力を感じる(書かれた時代が時代だしね)一方で、ホリー自身は底の部分で安定を求めていなくもなかったり、でも自分自身というものを失いたくなかったり、とまあこうやって言葉にしてしまうとよくある中二病みたいなんだけど、そういう意識を、女性視点から掲示したこの作品は素敵だなあ、と思う。現代で読むとこの意識に対する目新しさは薄れるのかもしれないけれど。

表題作以外の3編はどこか幻想的というかアメリカっぽいというか。文体で魅了していくタイプなんだろうけど、如何せん訳が古いのか下手なのか、違和感を感じるというかはまり切れない部分が多々あったり。訳者も工夫はしているみたいなんだけどね。この辺りは素直に村上春樹辺りの新訳を期待してもいいんじゃないかと思う。

ティファニーで朝食を (新潮文庫)