麻生太郎 『とてつもない日本』

閣下の本。なんというか。若々しいな、閣下。

たしかに日本のこれからの国策についてポジティブに、特に現状を肯定的に受け止めてからの発展を重視した形で並べていて、まあ読んでる限りでは帯にあるように「快」著ではあるんだが。中身自体は総裁選の時とかで時折語られてたような話が中心で、どちらかというと参院選前にマスメディアを通さずに自分の政策をまとめといて読ませたかったのかな、という印象。
前半が、そのよく閣下が色んなとこで話すエピソードで、今の日本の状況を肯定的にとらえても大丈夫じゃんよっていうメッセージを送っていて、んで後半には外交とかで自説を交え色んな問題(と言われていること)についての見解を出してる。んでも語り口は平易で読みやすいし、なにより色んなことに口出してるのにどれもきちんと深い理解に基づいて自説がまとまっている、ってのに閣下の知識量の広さが伝わってきて、凄い人だと思う。「ソート・リーダー」とか「ビルトイン・スタビライザー」など、キャッチフレーズ的な言葉でメッセージを出すのは政治家としての戦略なんだろうなあ。

後半の外交について、普遍的な価値観を共有、ってのがモチベーションになっているけど、今現在の問題って、そういう価値観とかルールが全然別次元の存在とどう折り合いを付けるか、ってとこにもあるんじゃないかと思った。そんな難しい問題にしなくとも、ブータンとかいろんな国と価値があるじゃんさ、とも思う。上手くやっていただきたいものです。

この本を読んで、じゃあ何がしたくなるかと言うとそういうものでもなく、まとめのメッセージが

日本人が過度に肩に力を入れる必要はない。明日からできることは、今日までやってきたことと、少しの違いもない。
それはすなわち、懸命に働くこと。知識や経験を分かち合うこと。成功と失敗の体験を共有するため、機会をとらえて対話を重ねていくこと。その中から、政治でも経済でも、ベストプラクティスを互いに学びあっていくこと-。

だったりして、もしかしたら消化不良気味の読後感が残るかもしれない。全体通じても、一応こっち向いて話しかけてきてはいるんだけど、意識はマスコミへの批判でしかないように伝わってこないような部分も無きにしも非ず。


思ったより悪意ある感想文になっちゃったけど、個人的にはかなり好きですよ、この本。youtubeとかニコニコやらで閣下の態度みてやんややんや一喜一憂バンザイバンザイやってるような人たちが読むと入門書みたいな感じでとしてかなり面白いと思う。あとがき見るとその辺りの世代が対象みたいだし。あらあらcmizunaさんたら自分がまるでその世代から1つ抜けてるみたいな言い方ね。んなこたないですけどね。えへへ。

とてつもない日本 (新潮新書)