ブライアン・グリーン 『エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する』

読了。ざっと500Pちょっと。書いてある分野は超ひも理論。俺の将来の専攻希望のとこだね。更に言うと多分『CLANNAD』のことみもここだったかと。というか俺はことみを追ってこの分野に希望出してるんだけど。

前半が物理の基礎知識で、後半が超ひも理論の話をするっていう構成なんだけど、この本のまさしくエレガントなところはその前半部分だと思うね。このあたりの特殊相対論とか量子力学なんてのは、普通は数式ありきで(だって結果が直感に反しているんだもの)、その結果を追うように現実の解釈の仕方を考える、なんて手順を踏まないとどうしようもない部分があって、例えばうちの大学の理学部でも、たまに一般向けの講座とか文系向けの授業とかやろうとするんだけど、面白い中身を喋ろうとする前に前提としてやっぱり黒板に数式を並べなくちゃいけなくて、そうこうしてる間に聴衆の興味が薄れてなんだかもうぐだぐだ、ってことがしょっちゅうあったりするわけ。それをこの本ではその基礎部分を、ほとんど数式を使わずに、ユニークかつ的確で想像可能な比喩を用いてざっと紹介しちゃうの。もしかしたら天下り的に見えるのかもしれないね、この辺りのエレガントさはもしかしたら、実際に少しでも物理やってる人間の方が感じるかもしれない。
後半はひも理論の話。比喩がほとんどなくなって、低次元によるアナロジーでどうにか説明しようとしてるけど、正直多次元なんざ想像できないんだからその辺は数式の方が説得力があるんだろうなあ。でも概説として現在の(ちょっと古めの本だけど)物理の問題とか展望が並べられてるのはとても面白い。あとこの辺りは実際この著者が一線級の研究者だからこそなんだけど、実際の高等研究所での研究の様子とか、論文をwebのアーカイブに投稿(すげえ時代だよな)した時のわくわく感とかハラハラ感も描かれていたり、研究者のインタビューからの言葉を引用していたりして、研究者志望としてはめっちゃテンション上がる。

アスピンウォール、モリソンと私は、計算を完成させなければ、ウィッテンに先を越されてしまうと感じた。(P370)

論文に反応する数多くのEメールのなかに、プレッサーからのメールがあった。それは物理学者が別の物理学者に贈ることのできる最高級の賛辞だった。「ぼくが考え付いていればなあ」。(P439)

生き生きしすぎだろこいつら。いいなあ。

翻訳で気になるところも無いから和訳でも多分問題ないはず。出来れば物理の知識があった方がいいだろうけどなくても大丈夫なのかな。とにかく、超ひも理論の概説としてはとてもわかりやすくていい本だと思う。勿論物理なんだから、最後には数式で理解、説明しないと駄目なんだけどさ。
あと、まだ観てないけどどうやら無料で映像版もあるそうな。→NOVA | The Elegant Universe | Watch the Program | PBS

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する