慶応義塾大学佐藤雅彦研究室+中村至男 『任意の点P』

本に眼鏡みたいな凸レンズがついてて、それを通してみると立体的に見えるよ、っていう図が50個ほど載っている本。

ただ3次元で見えるっていうとなんだかとても直接的なアプローチのように聞こえるけれど、描かれているのは「絵」ではなくむしろ、直線的に描かれた幾何学的「図」。このあたりの作者のセンスなんかは『ピタゴラスイッチ』なんかを観ると、直線の使い方なんかの上手さがわかるよね。本来は1次元である「線」を3次元で見せるっていうのは凄く面白いと思った。そういう理屈じゃなくても、3Dで見えるその図は細工のような美しさを持っているとは思うんだけど。

で、その直接的なアプローチではない、っていうのにも関係するけど、どの図も、3次元に見えた後に何か一捻り考える要素ってのが与えられてると思うんだよね。例えば『可動関節』ってタイトルの図だと、3次元の図が見えた後に、「これはこことここの接ぎ目が回転するんだろうなあ」とか、色々想像の余地とかが残ってたりするの。そのあたりの題材の選び方やタイトルの付け方なんかも結構良い。

難点を挙げるとしたら、その図ごとのタイトルが、1回1回眼鏡から眼を離さないと読めない点かな。眼鏡を通してどんどんページをめくってわくわくしたいのに、いちいち眼鏡から目を切って、でまた眼鏡覗いて焦点合わせて、ってやるのは結構面倒。まあ程よい休憩になってるのかもしれないけれど。

個人的にお気に入りは『12 衛星 東経97度20分 南緯26度12分』と『28 落雷』。『27 書き順』なんかも好きだな。

任意の点P

任意の点P