otherwise 『sense off』

 2000年の元長シナリオ。超能力を持った少年少女数人が集められて学校生活のようなものを送らされている施設での話。日常会話が『ONE』以後、15年前のエロゲって感じの鬱陶しさ(主人公が突飛な言動をしてツッコミ待ちするやつ)(今でも年いったセンスないオタクが浮かれたときにやってて「ああ……」って思う)がつらいけど。終盤、ややシリアスになった辺りでの説明のなさはやや心地良い。ドラマCDの方はそのうちのシナリオ1本分の補完かな。補完になってるかって言うと、かなり微妙だけどね。実際語られている、認識がどうこう、コミュニケーション手法がどうこう、という辺りは、ちゃんと噛み砕いて理解すると、まあここ15年間で他の色々な手法で語られちゃった感はあるよね(逆にこの作品の主人公の能力が、Kanon問題の回避になってたりとかいう程度の批評能力はあるけど)。これも微妙に、その主人公の、突飛さの延長線上の理解されづらい言い回しではぐらかすような感はあるんだけど、ちゃんと聞いてみるとそこまで難しいこと言ってないつうか、そんなひねくれた言い方しないと理解できないもんでもねーな、とは思う。ただ、一見するとこの業界にありがちな多世界解釈やら観測者問題やらに見えそうなものを明確に否定してて(特にドラマCD)、まあ整合性のある代案を提示しているわけじゃないから難しいけど、矛盾のない物語を提供しようという枠に収まらない、よく分かんない「作家性」みたいのが見え隠れしてんのがこの作品の魅力かなーとは思う。おまけみたいな扱いの慧子ルート(うつろあくたシナリオ)の、認識を模倣したときの身体性という問題意識は、むしろ最近の人工知能のシンギュラリティの話でもあるんだろうけどな。『birthday eve』なんですよ。