半端マニアソフト 『冬は幻の鏡』『カクリカ』

 11年前に出てフリー化された同人ゲーのフユガミと、それと世界観(というほど長い作ではないけど)を同じくする夏コミ頒布作のカクリカ。カクリカの方はまあ体験版みたいなもんだから置いとくとして。
 フユガミ、北海道の端っこの方の街を舞台にした冬の学園ホラーなんだけど。こっちは確かに絵が粗かったり既読スキップがなかったりで、10年以上前の同人ゲームらしい点はあるんだけど、同時にシナリオはその同人っぽい粗さが荒々しさになって、日常ギャグ部分は呆れるほど頭のおかしいキレッキレのギャグとなり、ホラー、グロテスク部分の暴力性になり、その言葉で書かれるシナリオは届くものになっている。特に小太郎、格好良かったな。普段は一番馬鹿なことばっかやってるデブで、実際ホラーアクションシーンになっても全然何もできてないんだけど、葛藤をぐっと飲み込んで声張って踏み出せるところ、その1点だけでこの人が人に慕われてるというのが伝わってきて、すごく良い。全体としては、複数主人公でその感覚の視座を変えながら、人間と(人そっくりの)幽霊を同類と見られるかどうか、共感の対象に出来るか、という点について、このライターは当然でない"感覚のズレ"を当然のように書くのが最高に上手い人なんだけど、ここを書き切っている。