『魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』

 さあ、叛逆という言葉はもちろん神に向けられた言葉で、神とはすなわちまどかだよね。叛逆とはまどかの意志に対してのもので、ではまどかの意志に対抗しうるキャラとはさて、ほむらのことだ、つまりこの物語の黒幕はほむらだね、というのはサブタイだけを読んで分かることで実際それは正しいから、最初の70分くらいまでは安心してその黒幕の暴き方のディテールを楽しめば良い。開幕いきなりの犬カレーから何度も現れる踊る少女のモチーフ、それが示すように茶番劇を踊らされる魔法少女の演技過剰と、その光景の幸せがあまりに幸せすぎて「これってそういう物語なのかな?」と油断したタイミングで気が付くほむらの台詞、そこから仕掛けの暴露、そしてそれを回収するバトルの百花繚乱、新キャラも出てくるよ、これでハッピーエンドだわーい! いい映画だね! 外と繋いじゃってQB的なものは逃げちゃって観測が成立しちゃわないのかな、でもそれでいいならそういう理屈になってるんだろう楽しいからこれでいいや! で終わるかと思ったんだけど、さあ。
 なんというか、『まどかマギカ』については放送中からずっとコンプレックスみたいのがあって、なんていうかね、みんなが言うほどまどマギって特異点的に変なアニメではないと思っていたのね、そんなの新房のコントラスト強い画面構成で虚淵が好き勝手やったらこの程度には面白くなるだろう、うめてんてーの可愛いキャラとのギャップがまた面白くなるだろうな、なんてのは放映前から分かっていたわけで。まあ特に俺なんかは虚淵のエロゲなんかは10年くらい前からやってて、特に彼がB級映画の手法でひたすらエンタメに走る作家だということも知ってるから、「こういう方向に面白くなるだろう」という予想を裏切らない面白さだったけど、それ以上の意外性は特にないし、どっちかっていうと『PSYCHO-PASS』の方が面白いと思ってたくらいで、更に言えば『まどマギ』でエンタメ以上のことを乗っけたこと言う評論家に「馬鹿じゃねーの?」と思ってたここ数年だったんだけど。なんか、この映画のラスト20分でやっと『まどかマギカ』に自分の予想以上の面白さを貰えて、俺はようやく『まどかマギカ』が好きになったのだと思う。