ひえ〜デース

 研究室の遠足で比叡山に行きましてな。うちの研究室、1年に2回くらい行くんですけど。去年までいた元所長がこの遠足大好きで、去年までの3年間で唯一その人に俺がマジ怒りされたのって、「君の立てた遠足の計画が生ぬるい、もっと山を登らないと、デートじゃないんだから」っていうのを、研究室全体のメーリングリスト上で公開怒られした、っていうやつだけ、ってくらいのもんなので、まあわりとちゃんと山登りをする伝統だったんですけど、今回は全然軽めのやつで、全然山登りとかはしない計画だったんですね。
 なんか、今回は全然気乗りしなくて。前日の夜27時まで、翌日のドタキャンの理由を考えてて眠れない、みたいな感じだったんですけど、ちゃんと朝7時に起きれて、まあぶつくさ文句を言いながら集合場所に行きました。偉いな俺。そしたらそこに、スタッフの1人が奥さんと、あと3才くらいのお子さんを連れていらしてて。今回の遠足は軽そうだからってんでいらしたんですって。あらあらと思って。
 幼児って面白くね? あの、体の動かし方の下手くそさ、ちょう面白いんだよね。ロボットみたいな動き方すんだよ。延暦寺、かなり石段が高めで、その幼女の膝上くらいまであるのを、親御に手を引かれながら一段一段上がっていくのね、後ろから見てて、ちょう面白い。あと、基本的に研究室遠足は俺、列の最後尾でぐだぐだ後輩に愚痴をこぼしながら最後尾を歩くことにしている(つか、気が付くとそうなっている。この歩いてる時の愚痴癖みたいのは前に沖縄で元カノに怒られたな)ので、自然と、その幼女一家と歩調が合うことになったりしてるんだね。さすがに幼女に愚痴はこぼさないし、なんか、遅れ気味の幼女をサポートしている学生、みたいな立ち位置でなんなら感謝されたりしている。俺がすごい疲れてるだけなのに。
 帰り道の選び方を失敗して。なんか、そもそもこの連休期間中、京都側から登るケーブルカーが運休してて、2時間かけて滋賀県側からぐるっと回って戻るしかないんだけど、京都に直接行くバスがあるらしいってのを看板で偶然知って、そんで遠足の後の宴会の準備があるから(あとタルいから)早めに帰りたいってんで、みんなから離れて先にバスで帰ろうみたいな話を後輩としてたら、その幼女一家も一緒に帰ろうってことになって。バスは乗り継ぎないから楽だしね。まあ、そんなこと言ってたら他の人もずらずら便乗してきて、大方の人はバスで降りることになって、もうよく分かんないんだけど。そんでバスに乗ろうとしたら、バスが満員で乗れないんだ。次のバスは1時間後。なんかもうそれを聞いた時点で、また大方の人たちは今度、またケーブルカーの駅の方に走ってちゃって。もう研究室はバラバラだよ。誰のせいか知らんけど、研究室遠足なのに4隊に分かれてるからね。元々の予定通りのケーブルカーに乗っている組(2人)、次のケーブルカーに乗ろうと走って行った組(いっぱい)、1時間バスを待つことにした人たち(俺含め学生数人と幼女一家)、あと徒歩で山を下るというポスドク1名ね。結果的には徒歩が1番早かったらしい。そんな正答、知らねえよ。その教訓を元所長の呪いとして神話化して代々語り継いでいけというのか。
 まあ、俺らに関してはもう、バス停で待つしかないですから。あちこち宴会の準備を遅らせるために電話したりしたら、あとはぐだぐだ話してるしかないのね。もう幼女は電源が切れたみたいな寝方してて、その首の座ってなさがこれまた爆笑だなーと思いながら見てたら、その父親のスタッフ、まあ若めのスタッフで気さくだし俺と同じ部屋だからわりと気軽に話すんだけど、いつもの感じで奥さんに突然、「cmizunaくんってオタクなんだよ〜」とか言い出すのね。「えっ」って思って。最後の最後にそれをおっしゃる、それをおっしゃる、それをおっしゃる。なんというか、その年代のお子さんをお持ちの母親にそれを言ってしまうと、俺が幼女を見てた意味が全部違って見られちゃうじゃん……。違う、違うんだって……・。