bitterdrop 『波間の国のファウスト』

　"特殊経済圏における私たちの絆買い戻しADV"、ということで、稼ぐ金が全てと言われる特殊経済特区に於いて、物凄い額の金を動かす金融経済で幼馴染みたちと切った張ったを繰り広げる経済エロゲ。と言っても、その辺は単に奇を衒ったものではなく、まあ普通に新聞が読めるくらいの人なら知ってる程度の経済知識で楽しめるものだし(まあチュンソフトとかシュタゲみたいな用語集があっても良かったとは思うけど)、その金融経済の危うさ、金こそ全てという価値観を、最終的には幼馴染みたちとの和解そして未来、というテーマに完全に取り入れることが出来ていて、単純に衒学的なものに留まらない。出てくる奴らは、金という欲望が形として目に見える分だけ信念がはっきりした奴らばっかりで、そこに弄やら策やらハッタリやらで、金融という名のスピード感ある知的バトルを繰り広げるのだから面白くないわけがない。
　まあ残念なのは、明らかにルート削除の跡が見えて、まあ例えば最初から最後まで一切選択肢がない1本道シナリオなのに、メニューには「次の選択肢までスキップ」とかが残ってたり、あとは実際ストーリー中にエロシーンのあるヒロインは1人なのに、エンディングのあとに回想を見ると他のヒロインのエロシーンが追加されてたり、まあ、なんというかだ。うーん、攻略順固定型のマルチエンディングで今あるシナリオをグランドルートにすれば整合性あんま気にしないでどうにか出来たろうし、あと例えばサラとの人権観、常識の相違なんかは確実に面白いのが一本書けそうな気がするんだけどなあ。その点は惜しい。

波間の国のファウスト