野村総一郎 『うつ病の真実』

 これまでの鬱病治療の、まあDSMによる診断と投薬、みたいな画一的なプロセス(よくいう喩えだと「その辺で転んで折れた骨もスキーで折れた骨も治し方は一緒」とか)に疑問を投げかける形で、鬱病のそもそもの原因を考えてみよう、という動機の本。それでとるアプローチは「ギリシア神話から鬱病っぽい記述を探す」とか「人以外の動物に鬱病があるか考える」とかで、しかも著者本人が言うように、別に仮説を立てて検証するみたいなことはしない。本の前半くらいは、医学史の精神病のとこだけ切り取るだけなので、なんか、学部生が一般教養で書いたお勉強レポートを読まされているような気分。途中でちょいちょい混じってくる喩えもいまいちぴんとこないしな。後半のクレペリン以降の現代の治療の話、薬のメカニズムの辺りはちょっとためになったけど。個人的には、せっかくだからこの方面なら最近の血液検査による診断の話とか聞きたかったかなあ。あとまあ、完全に素人の目線で言えば、今んとこの治療って、薬の量を細かく調節しながら治るまでちゃんと薬を飲む、というのが一番治る可能性が高いと聞くわけで、それを「画一的でインスタントな治療」と批判した時に、逆に「あの医者は自分に合わない、自分にはもっと他に自分に合う医者がいるはず」つって途中で医者に行くのをやめちゃう、とかいう方向に繋がりかねないのが一番良くない気がするんだけどなあ。セカンドオピニオン、んー。

うつ病の真実

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