ニトロプラス 『装甲悪鬼村正』

 重厚なシナリオで知られる、仮想戦記風和物スラッシュダークADV。まあヒロインすら容赦なく死ぬバイオレンスっぷり。えらい数の登場人物が出るんだけど、それがいちいち、ちょっと出番が無くなると、とりあえず殺される。エロシーンも暴力的で、これに至ってはもう露悪に近い。そんな、血腥いシナリオが延々続きます。しかしこれが結構面白くて。「正義と悪、善と悪の違いは、単なる視点の違いだけ」っていう、まあ少なくとも中盤くらいまではそれに関する主人公の苦悩がテーマ(終盤は、それを踏まえての更なる決断の話だったりするけど)なんだけど、それをむざむざと暴き出すように、各シナリオごとに、誰の味方になって戦況を見るかが違ってて。そうすると、あるシナリオでは殺してやりたいくらい嫌なやつ(もちろん死ぬ)だったのが、違うシナリオでは粋の分かる洒落もの(死ぬ)だったりとか、あるシナリオでは単なるヘタレ馬鹿(死ぬ)だったのが別のシナリオでは武人として殊勲を遂げてたり(死ぬ)とかする、それでいてキャラがブレているわけでは決してなく、つまりそのキャラの重層性、視点の違いというものを完全に書ききっているということだったりする。その"人間"の重層性を踏まえたシナリオだからこその、単純な原理主義では行けない、主人公の苦悩が、本当に良く書ききれている。骨太で良いゲームでした。

装甲悪鬼村正 限定生産版

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