ヘミングウェイ 『海流の中の島々』

 巨匠ヘミングウェイが、生涯世に出すことのなかった未完の大作。「海」を舞台にした3部作で、さすがのスケール感溢れる自然描写と、男臭い熱気に圧倒されて、そしてその中に予期されていた、その熱がふっと消えたあとの孤独に、下巻いっぱい使って苛まれ続ける。特に、前半にあった「釣り」の描写、人間と海の生き物が剥き出しでぶつかり合って格闘する描写は、もちろんこの作者だと『老人と海』で完成されている節はあるんだけど、この作だと、主人公の息子のイニシエーション、っていう大きな意味が更に乗ってきてて、読んでる最中の白熱感、そしてそれが去ったあとの下巻の喪失感ったらない。良い小説でした。

海流のなかの島々(上) (新潮文庫)

海流のなかの島々(上) (新潮文庫)

海流のなかの島々(下) (新潮文庫)

海流のなかの島々(下) (新潮文庫)